まちの仕事人インタビュー
民泊だけじゃない。日本と中国の架け橋に
株式会社宝森 代表取締役 宋 涛 (そう とう) さん インタビュー

株式会社宝森代表取締役。中国天津生まれ。大学では経営学を学ぶ。中国の大学を卒業後に来日。日本語学校卒業を機に、株式会社宝森を設立。貿易商として事業運営をしたのち、民泊事業に参入。「お客様に低価格で良い商品とサービスを提供する」をモットーに現在は南大塚の宝森ビルで民泊を運営。「和」な内装が欧米を中心とした旅行客の心をつかみ、人気となっている。中国人ネットワークを生かして、経営コンサルタントとしても活動中。

宋社長は中国のご出身ですが、日本で民泊を営まれています。来日された理由を教えてください。

もともとは日本の電化製品が大好きで日本に興味を持っていました。いろいろと調べるうちに、電化製品だけではなく日本の文化にも魅力を感じるようになったんです。いつかは日本に行きたい。そんな思いから、中国で大学を卒業したのを機に来日することを決めました。

日本が好きで来日されたわけですね。来日後はすぐに民泊事業をはじめたのでしょうか。

来日した後、まずは日本語学校に通いました。日本語学校を2年で卒業した後に宝森を創業。創業当初は貿易事業からスタートしています。取り扱っていた商材は服とかスカーフに使われている生地ですが、当時の中国では質がいい生地を安く仕入れることができました。中国で仕入れた生地を日本に輸出。これが私の最初のビジネスですね。4年ほど貿易をし、その後民泊をはじめました。最初は保有していた分譲マンションを海外旅行客や交換留学生向けに貸すところからスタート。その後、今いる宝森ビルを購入。旅館免許を取得していまの民泊事業の姿になっています。

宋社長の民泊は落ち着いた雰囲気が特徴で宿泊者がリラックスできそうだなと思っていました。民泊にはもともと興味を持っていたのでしょうか。

正直興味を持っていたわけではありませんでした。最初は成り行きで民泊を始めたんです。というのも、私は大学で経営管理やプロジェクトマネジメントを専攻していたので、中国の起業家や投資家の知り合いが多くいました。私が民泊をはじめたきっかけは、彼らがオーナーになった民泊の運営管理を任されたことなんです。日本にいて民泊運営もできる友人が私しかいなかったからなのかもしれません。コロナ前の多い時には100物件くらいの管理運営をしました。そうやって友人の物件の運営管理をしていく中で、自分も民泊オーナーになってみたいと思い、民泊に興味を持ち始めたという経緯があります。


中国の仲間と共に

ここまでのお話をお聞きすると、創業から順風満帆に事業展開をしているように思えます。経営している中で苦しかった時期などはあったのでしょうか。

やはりコロナの時が一番苦しかったですね。民泊は海外旅行者の方で成り立っているので会社が傾くほどの大打撃を受けました。それでもなんとか生き残ろうと、物件を民泊ではなく短期賃貸で貸し出したり、利回りが低くなったとしてもとにかく空室率を下げて資金ショートしないよう必死で運営していました。今はコロナも落ち着き回復傾向にはありますが、当時はまさに経営危機という状態でした。

コロナは民泊業にとって大打撃だったのですね。現在は民泊業を中心に事業展開していますが、今後の展望は何かあるのでしょうか。

日本企業と中国企業の橋渡し役になりたいと思っています。コロナで苦しい時期を経験したことで、会社を長期的に発展させるにはどうしたらいいのかということをこれまで以上に考えるようになりました。その中でたどり着いたのが、日本の経済成長に寄与しようというものでした。具体的には、自分の中国人起業家、投資家ネットワークを活用しながら、日本の中小企業を盛り上げていくということ。日本には厳格な法制度と、優れた産業、高度な技術が数多くあります。しかし、中国の急速な経済成長の過程を見てきた私からすると、特に日本の中小企業は新しいコトへの対応が一歩遅れてしまっている印象があるんです。個人的な意見ではありますが、中国は新しいコトへの適応が早いがために急成長を遂げたのだと思っています。逆に中国はまだまだ技術面で日本には追い付けていません。ここに成長のヒントがあるではと思ったわけです。つまり、日本の技術と中国のスピード感を掛け合わせることで、相互補完の関係が生まれると。日本と中国の企業の架け橋に。日中でビジネス経験のある私だからこそできる役回りであると思っています。また、ゆくゆくは日本の企業と中国の経営者がタッグを組んだ会社で日本人の学生さんを採用。日本の学生さんに多様な価値観と幅広い知見を身につけていただくことで日本の将来を担うグローバル人材を増やしていけたらとも考えています。


非常に壮大な展望ですが実現したら日本復活の起爆剤になるかもしれませんね。最後に読者の方に一言お願いします。

現代は新しい時代に突入していると思っています。特に人工知能(AI)の出現によって世界の市場構造が大きく変化しています。そして今後ますますAIによる変化は加速していくでしょう。この変化に取り残されてしまうのではないか、AIの出現で自分の将来はどう変わるのだろうと不安になることもあると思います。ただ、時代の流れを変えることはできません。適応していくしかないのです。なのでみなさんには、ご自分の興味を見つけてそれを全力で学び、理想を貫いてほしいと思っています。そうすることで、はじめて今の時代に適応できる人材になると思ってます。世界は多様で面白いものです。この多様性に満ちた新時代をみなさんが楽しく豊かに歩めるようにしていきたいと思っています。

インタビュー後記

インタビュー前、実は中国の経営者ということで、ゴリゴリの経営者をイメージしていました。しかし、実際にインタビューをさせていただくと、物腰やわらかでいい意味で予想を裏切られました。一方で、胸の奥には熱い想いを抱いており、それがインタビューを通じてひしひしと伝わってきました。コロナを経て、世界情勢のみならず、日本の経済状況も大きく変わっています。そのような環境の中で、日本経済が復活し、飛躍を遂げるためには、外の世界にも目を向け、積極的に他国のいい事例を取り入れることが重要なのだと思います。日本の伝統を守りつつ、経済成長を果たしていく。それを実現するためのヒントを今回のインタビューを通じて学ぶことができたように思えます。

お問い合わせ

株式会社宝森

東京都豊島区南大塚1丁目57番3号

TEL:03-6902-1215

*お電話相談の際、『豊島区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。