
OurCargo株式会社を経営している森山由実さん。岐阜市の駅前商店街にある眼鏡店で、3人兄妹の末っ子として育った。幼い頃から、家業を営む両親の背中を見ながら、「商売の大変さ」と「ものづくりの面白さ」の両方を身近に感じてきたという。大学では機械工学を学び、卒業後は大手重工メーカーへ入社。火力発電プラントの設計業務に携わる中で、2019年前後に広がった終身雇用見直しの流れを受け、「これからは個人の力が必要になる」と感じ、独学でPythonを学び始めた。その後、物流業界へ転身し、2023年7月に会社を設立。現在は物流事業と残置物整理事業を通じて、「人が誇りを持って働ける物流の未来」を目指している。
現場を知らなければ、本当に役立つサービスは作れない
こういう考えで取り組んでいます
物流業界に関わるようになったのは、前職で物流設計や配送効率化の仕事に携わったことがきっかけでした。実際に現場へ入ってみると、電話やFAX中心のやり取りや、属人的な運営など、まだまだアナログな部分が多く残っていることに気づいたんです。
一方で、物流は社会を支える大切なインフラでもあります。だからこそ、「もっと現場で働く方々が働きやすくなる仕組みを作れないか」と考えるようになりました。そこから、トラック会社同士をつなぐSaaS型のアプリ開発に取り組むようになったんです。
ただ、実際に仕組みを作っていく中で、「現場を知らなければ、本当に役立つサービスは作れない」と強く感じるようになりました。そこで、あえて自社で運送事業を持ち、自分たち自身が現場に入りながら課題を理解していこうと考えたんです。現場の声を直接聞きながら、物流業界をより良くしていきたいという思いが、今の仕事につながっています。
会社設立までの経緯を教えてください。
もともとは、「安定した仕事に就きたい」という気持ちから、大手重工メーカーへ入社しました。火力発電プラントの設計に携わる仕事は責任も大きく、非常にやりがいがありました。
ただ、2019年前後に「終身雇用の時代が終わる」というニュースを目にする機会が増え、このまま会社に依存した働き方だけで大丈夫なのだろうか、と考えるようになったんです。そこから、「個人としても力をつけなければいけない」と感じ、独学でPythonを学び始めました。
その後、物流業界へ飛び込み、配送や物流設計、アプリ開発などに関わる中で、人手不足や非効率な仕組みなど、業界が抱える多くの課題を目の当たりにしました。しかし同時に、物流は“人の力”で支えられている仕事だという魅力も感じたんです。
だからこそ、現場で働く方々がもっと誇りを持てる環境を作りたい。その思いを形にするため、2023年7月に会社を設立しました。
会社の特徴を教えてください。
現在は、軽配送事業と残置物整理事業を中心に展開しています。当社の特徴は、「運ぶ」という仕事を単なる作業ではなく、“人と人をつなぐ仕事”として考えているところです。
物流業界は、荷主様、倉庫会社、配送会社、そしてお客様と、多くの人のつながりで成り立っています。その中で、ただ荷物を届けるだけではなく、「どうすればもっと気持ちよく働けるか」「どうすれば現場が良くなるか」を常に考えています。
また、もともとはSaaS事業からスタートした会社だからこそ、現場感覚とテクノロジーの両方を大切にしている点も特徴です。AIやデジタル技術によって効率化できる部分は積極的に改善し、その分、人にしかできない仕事へ時間を使える環境を作りたいと考えています。
残置物整理事業についても、単なる片付けではなく、お客様の思い出や人生に触れる仕事だと感じています。実際に現場へ入る中で、「人生に寄り添う仕事」だという実感が強くなりました。
お仕事で大切にしていることを教えてください。
一番大切にしているのは、「人を大切にすること」です。お客様はもちろん、一緒に働いてくれるドライバーさんや仲間たちとの信頼関係を、何より大事にしています。
物流業界では、現場と管理側で認識がズレてしまうことも少なくありません。以前、配送ルートの格差に不満を抱いたドライバーさんと対立してしまったことがありました。その時に感じたのは、表面的な説明だけでは人は納得できないということです。
そこで、時間をかけて腹を割って話し合いました。すると、お互いが同じ方向を向いていたことに気づけたんです。その後、そのドライバーさんは新人教育まで買って出てくださるようになりました。
人の問題は、結局コミュニケーションでしか解決できないと思っています。だからこそ、普段から1対1で話す時間を作り、悩みや想いを共有することを意識しています。
この仕事のどんなところが好きですか?
物流業界は、人情味があるところが魅力だと思っています。現場で働く方々は、本当に熱い想いを持っている方が多いんです。
もちろん、大変なこともありますし、厳しい言葉をいただくこともあります。でも、その分、本気で向き合えば、本気で返してくださる方が多い世界でもあります。「森山さんがそこまで言うなら頑張るよ」と言っていただける瞬間には、この仕事ならではの温かさを感じます。
また、残置物整理の仕事では、お客様の人生に触れさせていただく機会があります。最初は経営的な視点から始めた事業ではありましたが、実際に現場へ入る中で、「ありがとう」と言っていただける重みを強く感じるようになりました。
単に荷物を運ぶだけではなく、人の暮らしや想いに寄り添えるところが、この仕事の大きな魅力だと思っています。
今後やりたいこと等、展望を教えてください。
今後は、物流業界全体がもっと協力し合える仕組みを作っていきたいです。現在、物流業界では人手不足が大きな課題になっていますが、一社だけで解決できる問題ではありません。
例えば、長野や岐阜などを中継地点にして、複数の会社でバトンをつなぐ「共同配送」の仕組みができれば、ドライバーの負担軽減にもつながると思っています。
また、AIやデジタル技術を活用しながら、請求業務や管理業務など、人でなくてもできる部分は効率化していきたいです。その分、現場で働く方々へしっかり還元できる会社を目指しています。
そして将来的には、売上100億円規模の会社にしたいという目標もあります。ただ、それは単純に利益を追求したいわけではありません。社会的な影響力を持ち、「物流の仕事ってかっこいいよね」「ブルーカラーって価値ある仕事だよね」と言われる世界を作るために必要な規模だと思っているんです。
成功哲学を教えてください。
私が大切にしているのは、「挑戦を止めないこと」です。実は、豪華な暮らしがしたいとか、高級品が欲しいという気持ちはあまりないんです。
それよりも、「やりたい」と思った時に、すぐ挑戦できる資金力や経験を持っていたいと思っています。新しいことに挑戦できる人生そのものが、自分にとって一番大切なんです。
そのためには、自分自身も成長し続けなければいけませんし、会社としても強くなっていかなければいけないと思っています。
また、一人で成功するのではなく、仲間と一緒に大きな景色を見たいという気持ちも強くあります。経営は、一人では絶対にできません。信頼できる仲間と悩みながら、一緒に前へ進んでいくことが大切だと思っています。
これからも、人とのつながりを大切にしながら、挑戦を続けていきたいです。
インタビュー後記
穏やかな語り口の中に、現場への深い理解と、働く人への強い敬意を感じた森山さん。特に印象的だったのは、「人の問題はコミュニケーションでしか解決できない」という言葉でした。
効率化やAI活用が進む時代だからこそ、“最後は人”という姿勢を大切にしていることが、話の端々から伝わってきました。また、物流だけでなく、残置物整理を通して「人生に寄り添う仕事」へと価値観が広がっていった話も、とても印象深かったです。
現場を知るからこそ語れる理想論ではない未来像。そして、ブルーカラーの価値をもっと高めたいというまっすぐな想い。森山さんが描く物流の未来に、これからますます期待したくなるインタビューでした。
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*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。