
1968年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学卒。大学卒業後、教育業界、保険業界、通信業界、IT業界などで、営業や営業推進・営業企画など、お客さまに接する業務に従事。2021年、新しい挑戦として、興味のあった飲食業界に向けて『合同会社グロバース』を起業。
6次産業化の伴走支援

この仕事を始められたきっかけを教えてください。
50歳を過ぎて、これからの働き方を考える中で「もっと自分に身近なことを仕事にしたい!」と考えるようになりました。生活に身近な『衣』『食』『住』のうち、最も興味を持ったことが『食』。起業のテーマについて色々と考える中で“食品ロス”というキーワードが心にひっかかり、「自分に何かできないだろうか?」と思うようになりました。そんな思いで起業してみたものの、食品業界のことを全く知らなかったため、初めは本当に手探りでした。核となるビジネスモデルも決まらないまま、時間だけが過ぎていき、悩んだこともありました。転機は、関内駅の近くで、野菜を路上販売している人に声を掛けたこと。農家の多くが、規格外の野菜を廃棄している現状を聞き「何かできそうだ!」と直感が働きました。農家の方を何人かご紹介いただき、ヒアリングした中では「種類によっては4割近くの野菜を廃棄している」というところも。「何とかしたい!」という思いから、当日廃棄が決まった野菜を、周辺の飲食店に売り出そうと考えましたが、安定的に量を提供できないなどの理由から、上手くいきませんでした。そこで考えたのが、規格外などの野菜を保存・保管ができるようにするために『乾燥加工』をすること。この食品加工が上手くできたことにより、食品ロスを減らす目的に沿ったビジネスが広がりました。ちなみに屋号の『グロバース』は、自分が成長しながら、そこで関わる方々と一緒になり、社会に対して新しいものを生み出したいとの思いから「グロース(成長)+バース(誕生)」の造語を作りました。

仕事の特徴はどのような点にありますか?
農家の廃棄を減らし、農家の利益を増やすべく『6次産業化の伴走支援サービス』を行っています。6次産業とは、1次産業(農林水産業)の生産者が、2次産業(加工)や3次産業(流通・販売)に主体的に関わり、農林水産物の付加価値を高めることで、利益の向上や活性化を目指す取り組みのことです。規格外などで廃棄される予定の野菜や果物を、どう加工して、どこに売るのか、種類や農家の状況に合わせて、最適な組み合わせを見つけるための伴走支援をしています。実は、食材を加工するまでは比較的簡単です。最も難しいのが、売り先を見つけることで、農家の方は、比較的苦手な人が多い印象ですね。もちろん、本業の野菜の栽培が忙しいので、販売まで手が回らないことが実状だと思います。また、販売時にはなるべく農家の宣伝になるようにも工夫しています。商品ラベルには、なるべく農家の名前を入れてもらうように働きかけています。今まで廃棄していたものがお金に変わるため、農家の方にも非常に喜ばれています。
農家と企業の橋渡し

どんなお客さまが多いですか?
横浜市内の農家の方から、多くのご相談をいただいています。代々農家をやっている方の中には「加工品なんて生産者が手を出すことではない」と考える方もいらっしゃいます。その中でもやはり加工に興味のある方がいて、現在10数件の農家とお取引しています。野菜だけでなく、果物も取り扱っています。例えば、いちご狩りハウスを経営している農家では、いちご狩りで取られそうにないサイズのいちごを事前に摘み取り廃棄や冷凍保存していました。そこで、一度冷凍保存した後に「いちごソース」へ加工。そのうえで、ハウスが閉鎖している期間はキッチンカーで販売し、かき氷のシロップとして活用されています。一方で、加工した食材を使いたいという法人からのお問い合わせも増えています。私も神奈川県のSDGsパートナーの集会に顔を出すことがありますが、企業側がSDGsへの取り組みに敏感になってきており“横浜市内の農家が作った野菜や果物”に大きな関心を寄せられています。また、地域活動の一環として、小中学校の授業として、食品ロスの現状や規格外野菜の活用などについて、話をさせてもらっています。

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。
“人との繋がりを大切にする”ことを心がけています。現在のビジネスモデルも、農家の方との繋がりも、すべて人が繋いでくれたものです。「〇〇さんに聞いて、問い合わせました」と言っていただくことも多く、ご縁に感謝することばかりです。そんな人の繋がりから、2026年2月、相鉄いずみ野線ゆめが丘駅直結の『ゆめが丘ソラトス』の1Fに、食品加工場『たべるラボ』をオープンすることになりました。単なる食品加工所ではなく“つくる・つながる・つたえる”をテーマに、農家の方と一緒に商品開発や、小学生の体験教室などのできる場になる予定です。乾燥野菜をパスダーにして手軽に飲めるスープのテイクアウトも予定しています。是非、お越しください。また、加工場で一緒に働いてくれるスタッフも募集しています。野菜加工に興味のある方、お気軽にご連絡ください。これからも、農家の方が作ったものが、一つでも多く、人の手に渡るよう、全力でサポートしていきます。

インタビュー後記
規格外とされる野菜は残念だ。同じ畑で、同じ育てられ方をしていて、同じ味にも関わらず、ただ大きさが少し違うだけで、廃棄されてしまう。農家としても誰かに食べてもらいたい。そんな野菜や果物に活躍の場を見出そうと伴走してくれる長谷川さんは、とても貴重な存在だ。
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