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一方的に相続放棄をしてくれと言ってきました。
(1年前の記事です) 掲載日:2022/12/11
昨年実父が亡くなりました。私の父は3歳の時に母と離婚しており、私は母に育てられました。葬儀の際、父には後妻がいる事が判明したものの、後妻は葬儀にも同席出来ない程病弱で現在認知症の状態だそうです。
今、後妻の姉のご主人とやりとりしていますが、先日一方的に相続放棄をしてくれと言ってきました。私も父の存在はあまり記憶はありませんが、血が繋がっている親族で赤の他人である方に相続放棄しろと言われた事に腹が立っています。
現在川崎市内に住んでおり、父が住んでいた実家に私が引越しする事はなく、今後私は売却して現金で相続したいと考えているのですがどのような手続きをしていけばいいのでしょうか?相手方は話し合いに応じてくれる様子もなく困っています。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。
まず大前提として,自ら放棄したいと思う理由があったり,負債の方が大きいといった事情があったりするのでなければ,相続放棄をする必要はありません。
後妻さんの義兄という方には何の権限もありませんが,それでも放棄を迫るような言動に出て敵対してきているのであれば,早い段階で弁護士にご相談になり,対応を検討されるのがよろしいと思います。
遺言が無ければ,相続人らによる遺産分割協議によって相続財産の処分方法を決めることになります。
ご相談者様に兄弟姉妹がおられなければ,法定相続人はご相談者様と後妻さんの2人となります。(ここでいう兄弟姉妹には,実の兄弟姉妹の他,お父様と後妻さんとの間の子どもや,後妻さんの連れ子であってお父様が養子縁組した子も含まれます。これらはすべて戸籍を調査すれば確認できます。)その後妻さんとの間で話し合いがつけば,遺産分割協議書を作成する等して,家を処分することができます。
問題は,後妻さんが認知症であるという点です。病弱であっても判断能力さえしっかりしていれば,直接交渉したり,後妻さんの立てた代理人弁護士を相手に交渉することも可能ですが,認知症で判断能力が減退しているのであれば,交渉したり代理人を立てたりすることはできません。現在やりとりをしているという後妻さんの義兄は,代理人として選任してもらうことができない状態である上,そもそも弁護士でなければ法律事件の代理人はできませんから,このまま交渉を続けたとしても何の解決にもならないのです。
ではどうすればよいかと言えば,結論としては,後妻さんについて成年後見等開始の審判を申し立てて家庭裁判所に成年後見人等を選任してもらい,その成年後見人等との間で遺産分割協議を行うのがよろしいと思います。成年後見人をつける申立ては,本人や四親等内の親族等ができますので,本件では後妻さんの姉やそのご主人の他,ご相談者様もできます。
しかし,後妻さんの状態がわからないままでは申立てがしづらいので,先方にやってもらうのがよろしいと思います。この点においては,後妻さんの義兄とやりとりをする意味があるといえます。もしどうしても先方が動いてくれなければ,ご相談者様みずから申立てをすることになります。
実はこれとは別に,家庭裁判所に後妻さんを相手取って遺産分割調停を申立て,さらに特別代理人の選任を申し立てるという方法もあるにはあります。この特別代理人は,成年後見人と違って,裁判所での調停手続かぎりで後妻さんを代理するものです。
本件では現に後妻さんが居住しているご実家の処分が問題となるところ,代償分割が不可能なら最終的には退去してもらう必要がありますので,退去後の生活の見通しが立たなければそもそも遺産分割も進まないという問題もあります。とすると,調停限りの特別代理人では役に立たないので,やはり成年後見人による必要があるのです。
実際,裁判所もそのあたりを考慮して,まずは親族の中で後見申立てをしてくれる人がいないかどうか,時間をかけて調査・検討するはずです。加えて,そもそも遺産分割調停は年単位で長引くのが通例です。長引けば固定資産税の負担も続きますから,時間の観点からも,後見申立てを先にする方が合理的ということになります。
後妻さんの義兄から相続に関する連絡がきているところからすると,おそらく一時的に後妻さんの面倒をみているのだと推測されます。病弱で認知症の後妻さんが自宅でひとりで暮らすのは無理でしょうから,姉夫婦としてもいずれ然るべき施設に入所させる等して,後妻さんの生活を安定させる必要があることはわかっていると思います。
成年後見人をつけることは,後妻さんご本人にはもちろんのこと,遺産分割の点でご相談者様にも,さらには一時的に後妻さんの面倒をみている姉夫婦にも,関係者全員にとって利益のあることですから,きちんと説明すれば理解が得られるのではないかと思います。