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女好きでどうしようもない父が春に亡くなりました。
(1年前の記事です) 掲載日:2023/01/04
四十九日法要も終わり、慌ただしい中とんでもないものが出てきました。母とは20年前に離婚しており、相続人は私と兄なのですが「全ての現金を愛人である行きつけのスナックの韓国人ママに相続する」と言うものでした。
空いた口が塞がらず呆れています。どこまでお人好しなのかと。
その韓国人ママとはうちの兄妹は仲が悪く、顔も見たくはありません。先日手書きの遺言書のコピーを送ってきました。明らかに父の字です。
まだ現金は銀行から下ろしていません。100万円程度の通帳を親族である私達からこの愛人に渡さなければいけないのでしょうか?何か対抗策があれば教えて下さい。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。
通帳を無条件に渡す必要はないでしょう。
①遺言が有効なのか争う
②遺言が有効な場合でも、遺留分を主張する
ことが可能です。
お父様の愛人から、自筆の遺言書のコピーが送られてきたとのことですが、2点で争うことが可能です。
①遺言が有効なのかどうか争うことが出来ます。
まずは、送られてきた遺言書が以下の形式的な条件を満たしているのかどうかを確認して下さい。
・全文が自筆で書かれているか(但し、財産目録は自筆でなくても構いません。)
・日付が書かれているか。
・お父様の氏名が書かれているか。
・印鑑が押されているか。
もし、どれかが欠けていた場合には、遺言は無効です。その場合には通帳の引き渡しを拒否してかまいません。
また、矛盾する内容の遺言が2通ある場合、先に作られた遺言は無効となります。そこで、他に遺言がないかどうか確認する必要があります。公正証書遺言の場合、全国の公証役場で検索をすることが出来ます。お心当たりのある場合には、お近くの公証役場にお問い合わせ下さい。
また、「愛人である行きつけのスナックの韓国人ママ」という記載は、問題となります。通常、受遺者は氏名を記載して特定します。送られてきた遺言書に、愛人の氏名が記載されていないのであれば、遺言の内容が不明確として、無効となる可能性があるでしょう。
以上のように、自筆の遺言は争う余地がいくつもありますので、まずは、遺言が有効なのかどうか確認する必要があります。
②遺言が有効な場合でも、遺留分を主張できます。
一定の相続人には、遺言があったとしても最低限相続できる遺産の割合が決められています。これを遺留分といいます。
お父様は、「全ての現金を愛人である行きつけのスナックの韓国人ママに相続する」という遺言を遺しました。しかしこの遺言のとおりにすると、M様は貰えるはずだった遺産の最低額をもらえないこととなるかもしれません。このような場合、愛人に対して遺留分を主張することができます。
この「貰えるはずだった遺産の最低額」の計算は、相続人が子供2人の場合、(相続開始時にお父様が持っていた財産の価額 + 生前贈与財産の価額 - 相続開始時にお父様が負っていた債務)×1/2×1/2です。
お父様の遺産が100万円の預金のみで、生前贈与をしておらず、債務もなかった場合には、M様、お兄様それぞれが、100万円×1/2×1/2=25万円ずつ遺留分を主張できることとなります。すなわち、100万円の預金は愛人のものだが、M様、お兄様にそれぞれ25万円払えと請求することが出来るのです。
遺言の有効無効の判断や、遺留分の計算は難しい問題です。送られてきた遺言書をもって、一度、司法書士や弁護士へ相談されることをおすすめいたします。
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