まちの仕事人インタビュー
暮らしを支える在宅医療
ななみ在宅診療所 院長 蒔田 勇治 (まきた ゆうじ) さん インタビュー

ななみ在宅診療所を経営している蒔田勇治さん。東京都板橋区を拠点に、内科・緩和ケア内科・外科・耳鼻咽喉科を掲げ、24時間365日体制で在宅診療を行っている。患者さんのご自宅や施設へ訪問し、通院が難しい方々の生活に寄り添う医療を実践中。大学卒業後に一度は一般企業に就職するも、自身の将来に葛藤し、再考した結果、医師を志す。文系出身から医学部へ進学し、耳鼻咽喉科領域でがん診療に携わった後、在宅医療の道へ。地域に根ざし、患者さんとそのご家族の暮らし全体を支える医療に力を注いでいる。

今の仕事を始めたきっかけを教えてください。

もともとは医療とは無縁の分野で会社員として働いていましたが、その分野に適性があるのかとの葛藤が生じ、「このままでよいのか」と強く感じるようになりました。働く時間が人生の大部分を占める中で、その時間が満たされないことに危機感を覚え、環境を変える決断をしました。

自分の関心を見つめ直したとき、スポーツが好きで体に関わる分野に興味があることに気づきました。その中で、医師という職業であれば幅広く人の体に関わることができると考え、医学部を目指すことを決意しました。決して高い志からではなく、「変わらなければならない」という思いが原動力でしたが、その選択が今につながっています。



開業までの経緯を教えてください。

医学部卒業後は耳鼻咽喉科領域で研鑽を積み、特に大学病院では頭頸部がんの診療に多く携わってきました。10年ほど臨床経験を積む中で、結婚や生活の変化もあり、働き方を見直す必要性を感じるようになりました。

その後クリニック勤務を経験する中で、診療が特定の部位に限定されることに対し、「もっと全身を診たい」という思いが芽生えました。ちょうどその頃、自宅近くで在宅医療と出会い、患者さんの生活全体を支える医療に強く魅力を感じました。在宅医療で経験を積んだ後、自身の理想とする医療を実現するため、ななみ在宅診療所を開業しました。

診療所の特徴を教えてください。

当院の特徴は、患者さんの「生活全体」を診る医療を提供している点にあります。単に病気を診るのではなく、ご自宅での暮らしやご家族の状況、介護体制なども含めて総合的に考えることを大切にしています。

また、これまでがん診療に長く携わってきた経験から、緩和ケアには特に力を入れています。ご自宅で安心して過ごしていただけるよう、痛みや不安を和らげるサポートを行っています。さらに、耳鼻咽喉科の専門性も活かし、通院が難しい方の耳や鼻のトラブルにも対応できる点も特徴の一つです。多職種と連携しながら、患者さん一人ひとりに合った医療を提供しています。

患者さんとご家族と一緒に考えながら進めていくこと


お仕事で大切にしていることを教えてください。

一つは、多職種との連携です。在宅医療は医師だけで完結するものではなく、看護師やケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの方とチームで支える医療です。そのため、日頃から良好な関係を築き、円滑に連携できるよう心がけています。

もう一つは、患者さんとご家族のお話をしっかり伺うことです。医療者に対して本音を伝えにくい方もいらっしゃるため、その思いをくみ取る姿勢を大切にしています。ご自宅というリラックスできる環境で診療を行うからこそ、押し付けではなく、患者さんとご家族と一緒に考えながら最善の方法を選んでいくことを心がけています。

この仕事のどんなところが好きですか?

患者さんやご家族とゆっくり向き合い、コミュニケーションを取れるところにやりがいを感じています。それぞれの価値観や思いを伺いながら関係性を築いていくことは、この仕事ならではの魅力です。

また、多職種の方々と連携しながら一人の患者さんを支えていく過程も非常にやりがいがあります。チームとして協力しながら支えることで、より良い医療を提供できると感じています。患者さん一人ひとりに時間をかけて関われる点が、自分に合っていると感じています。


今後やりたいこと等、展望を教えてください。

現時点では大きな展望を描くというよりも、まずは地域の中でしっかりと信頼される診療所になることを目標としています。基盤を整え、安定した医療を提供し続けることが最優先だと考えています。

その上で、地域の方々に向けた勉強会や交流の場を作ることにも関心があります。認知症や介護について悩まれている方々が気軽に相談できる場を提供できればと思っています。在宅診療だけにとどまらず、地域全体を支える存在になれるよう努めてまいります。

成功哲学を教えてください。

特別な哲学というものはありませんが、「誠実であること」を何より大切にしています。一つひとつのことに丁寧に向き合い、真摯に対応することが結果につながると考えています。

また、自分が選んだ道を正解にしていくという意識も大切にしています。過去を振り返るのではなく、今の選択を積み重ねていくことが重要だと思っています。日々誠実に取り組むこと、その積み重ねが道を切り開いていくのではないかと感じています。

インタビュー後記

穏やかな語り口の中に、「誠実さ」という言葉がそのままにじみ出ているような方でした。特に印象に残ったのは、ご自身のこれまでの歩みを飾らず、率直に話してくださったことです。一度は別の道を歩みながらも、自分と向き合い、大きな決断をして医師の道へ進まれた経験。その背景があるからこそ、患者さんやご家族の気持ちに深く向き合えるのだと感じました。「生活全体を見る医療」という言葉の通り、目の前の症状だけでなく、その人の暮らしそのものを大切にしている姿がとても印象的でした。これから地域の中で、さらに信頼を集めていく存在になると感じるインタビューでした。

お問い合わせ

ななみ在宅診療所

〒174-0052

東京都板橋区蓮沼町20-14 2階

TEL:03-3965-0773

HP:https://nanami-clinic.com/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。