まちの仕事人インタビュー
印刷+αのよろず相談室
株式会社アイト 代表取締役社長 谷口 美保 (たにぐち みほ) さん インタビュー

1969年、埼玉県生まれ。弘済出版社(現:交通新聞社)で編集を10年経験した後、父親が創業した「株式会社アイト」入社。2007年に代表取締役に就任。印刷の業界団体で副会長をつとめる。

編集者、家業の印刷屋を引き継ぐ

この仕事を始めたきっかけを教えてください。

株式会社アイトはわたしの父、伊藤弘見が始めた印刷会社です。昭和47年から50年以上、神田猿楽町、神保町界隈で営業しています。正直、社会に出たころは、私が父の会社を継ぐとは思っていませんでした。きっかけは、父の後継者と思われていた兄の退社。その後父が体調を崩したタイミングで相談され、事業承継を見据えて父の会社へ入社することになります。もう24年前の事ですね。


前職の出版社では編集長として、編集だけでなく、見積りや数字の管理なども経験していました。「その延長で、印刷関係の仕事もできるだろう」と考えていましたが、入ってみるとかなり勝手が違いました。入社して半年は、総務・経理として会社全体の体制や財務の把握に務め、経営を学びました。その後は積極的に外へ出て営業活動をしています。ちなみに初めての仕事は、古巣の出版社を訪ねたときにお声がけいただいた「お散歩イベント」の取材と制作でした。なんと、いまもまだそのお仕事は続いています。


2007年に代表取締役を引き継ぎ、現在に至ります。ちなみに、社名の『アイト』は私の旧姓(父の苗字)である「伊藤」をローマ字「ITO」に直し、読み方を変えたもの。当時は電話帳で何でも探す時代。五十音順に掲載されていたので、苗字をそのまま社名に使うよりも、人の目につくチャンスが増えると考えた父のアイデアです。昔のSEO対策ですね。

仕事の特徴はどのような点にありますか?

“「印刷+α」のよろず相談室”として印刷を軸に幅広く対応しています。BtoB中心で名刺から数百ページの書籍まで各種印刷物を作りますし、紙以外のグッズ類の名入れなども取り扱っています。そのなかでも前職の経験を活かして「企画」からお丸ごと請けできることは、弊社の強みの一つです。一般的に、原稿があって形にするのが印刷屋の仕事ですが、弊社では企画が決まっていない段階でヒアリングから原稿を仕上げ、デザイン、印刷へと進めることが可能です。


BtoBでお客様のニーズがある印刷物・出版物を作るのが得意ではありますが、いま力を入れているのは『ありがとう出版』『ブランディング出版(分身ブック)』、2つの出版事業です。


『ありがとう出版』は、歴史と思い出を「本」という形に残す事業です。きっかけは4年前の父の他界。父はライフワークとして自分史づくりに取り組んでおり、長文の原稿を書き溜めていました。生前から、編集者である私に「本にしてもらいたい」と希望していましたが、業務が忙しく、つい後回しに。自社の創業50周年を迎え、そろそろ手をつけようと考えていたタイミングで父が急死し、葬儀に間に合わせて慌てて仕上げたものが最初の一冊です。コロナ禍で、葬儀にはあまり人を呼ぶことはできませんでしたが、父の自分史は多くの人に渡すことができました。人の歴史や想いを形に残すことの大切さに気付き、また作ったわたし自身も家族の思い出や父への思いを整理できたことでスッキリしたという体験が原点です。同じテーマでBtoBとしては会社の「〇周年記念誌」や創業者・経営者のお言葉を本にする仕事も数多く引き受けています。


『ブランディング出版(分身ブック)』は、ビジネスをしている人の考えや想いを伝えるツールです。数十ページ程度の小冊子の中で自分のストーリーを語ることで、どんな仕事をしていて、誰の役に立つのかを正確に伝えることができます。名刺よりも情報量が多く、チラシほど簡単には捨てられない。まさに自分の「分身」として動いてくれる一冊です。さらにセミナーや講演などされる方でSNSやメルマガでの情報発信を頑張っている方には書籍化などもお勧めしています。出版を通してご自身のブランド化に役立ちます。


編集経験を活かした出版事業

どんなお客さまが多いですか?

印刷事業は千代田区内を始めとする23区内のお客様が中心です。学校から製造業、飲食業まで幅広くお付き合いさせていただいています。雑居ビルの2階ですが神保町駅からすぐなので、看板を見てきてくださる方もいますね。


『ありがとう出版』は、ご本人であれば「終活」をしているシニア世代の方。「父・母にプレゼントしたい」という方は、40代~60代の方からのご相談が多いですね。 “米寿”などの長寿のお祝い・金婚式のお祝い・退職のプレゼント・葬儀のご報告・ご返礼など、人生の節目のタイミングでご検討いただく方が多い印象です。BtoBの分野では、事業承継やM&Aで創業者が退任されたり経営者が代わるタイミングで社史、記念誌、創業ものがたりなどを残されることをお勧めしています。創業者が会社を興したときの想いや、乗り越えたピンチなどの歴史を形に残すことができることにメリットを感じてもらっています。そもそも、経営者は褒められる機会が少ないため、出版物の中では「凄いことは凄い」「素晴らしいことは素晴らしい」と、しっかり伝えています。


『ブランディング出版(分身ブック)』は、士業やコンサルタントなど、対面やセミナーなどで、人と会う機会が多い方からのご相談が多いですね

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

これまで“NOといわない”ことで、仕事を広げてきました。もちろん時間的、物理的に無理、印刷通販より安くなどの非常識な依頼はお断りしますが(笑)。印刷業界はデジタル化が進んだ結果、この20年で大きく変化しており、その都度、新しい挑戦や学びが必要となりました。無茶振りとも思える難しい依頼でも、それに応える中で経験を磨き、事例を増やしながら事業は強くなります。当然、私一人で出来ることばかりではないため、社員はもちろん同業の仲間たちとの連携も欠かせません。例えば、弊社にはシールやパッケージを印刷する機械はありません。また、発送に関するリソースにも限りがあるため、ある一定の規模になると対応が難しくなります。そこで、印刷業界の仲間と連携することで、一つのチームとして案件に対応しています。先日、96歳の方からご連絡をいただき、自分史を制作・印刷しました。デジタル化と高齢化社会のいう背景を受けて、自分の人生や想いを形にする事業については、まだまだ伸びしろがあると考えています。ご興味をお持ちの方は、お気軽にご連絡ください。もちろん、その他の“よろず相談”も引き続き受け付けています。


インタビュー後記

「無茶振りに応えることで、会社を守ってきた」と谷口さんは笑顔で語る。しかし、自社領域を超える対応が容易でないのは確かだ。異業種交流会や同業者の集まりへ精力的に足を運び、常に人間関係と情報をアップデートし続けているからこそ、その「無茶振り」を信頼への変えられるのだろう。。

お問い合わせ

名称:株式会社アイト

住所:東京都千代田区神田神保町1-12太陽堂ビル2F

電話:03-3294-3344

Mail:info@kk-aito.co.jp

HP:https://www.kk-aito.co.jp

*ご相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。