まちの仕事人インタビュー
ライバルはエンタメ業界?「真面目な風潮をぶっ壊す」教育界の風雲児
株式会社フォーサイト CEO最高経営責任者 山田 浩司 (やまだ こうじ) さん インタビュー

株式会社フォーサイトCEO最高経営責任者。1962年愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学法学部法律学科卒業。趣味は読書と筋トレ。弁護士を目指して大学在学中に択一試験に合格。しかし当時の司法試験は30歳まで合格できないといわれていたうえ、家庭も裕福でなくビジネスの世界へ。総合商社から内定をもらうも、特発性難聴という難病を発症。弁護士、商社マンへの道が閉ざされてしまう。そんなとき、大手予備校を経営していた昔馴染みからの誘いで予備校講師の道へ。エッジの効いた独特な授業が生徒に人気を博し、アルバイト講師ながらもデビュー直後から超人気講師に。楽しみながら学ぶをモットーに難関資格試験予備校のフォーサイトを創業。累計受講者数40万人以上、全国平均を圧倒する合格率を誇る予備校にまで成長。今もなお最前線でより良い教育の姿を探求し続けている。

弁護士志望から予備校講師へと異色の経歴を持つ山田社長。もともと教育に関心が高かったのでしょうか。

当時は全く関心がありませんでした。むしろ学生時代は先生へ反抗的な方で、校内すべての先生を敵に回していたと思います。なので、実は学校の先生は私の一番なりたくない職業でした。ところが予備校経営をしている知人に誘われて予備校講師をしてみると、アルバイトなのに立ち見が出るほどの人気講師になってしまった。他校からも講師の依頼をいただき、依頼を受けるのに半年待ちの状況になってはじめて、「自分は教えることに向いている」と気づきました。そこから予備校講師として生きていこうと決めたのです。

立ち見が出るほどの授業とはすごい人気ぶりですね。他の講師と山田社長の授業ではどこが違っていたのでしょうか。

難しいことをいかにスッと受け入れてもらうかを徹底的に考えて授業をしていました。難しいことを難しいまま教えても生徒はなかなか理解してくれません。でも恋バナやちょっときわどい話であったら生徒は興味をもって聞いてくれるのですよね。生徒の興味と教えたいことを、いかに結び付けて講義をするか。これを徹底したことが他の授業との違いだと思います。そのほうが生徒の印象にも残るのでしょうね。ありがたいことに20年前に私の授業を受けてくれた生徒から、「先生の授業がいまだに印象に残っている」と声を掛けられ、自分の子供も入校させてくれるということもありました。


楽しみながら学ぶことの徹底とは言うは易く行うは難しかと思います。授業の準備は相当入念にしていたのでしょうか。

3時間の講義であれば、15時間は予習してきました。授業時間の4~5倍は準備しないと行列ができる授業なんてできません。世の中のカリスマ講師と呼ばれる人たちはみな予習をしていますし、本も山のように読んでいます。私も人間の行動原理を理解するために、心理学と宗教の本を中心に1日1冊は読書しています。

山田社長は常に勉強し続けてきたからこそトップ講師に上り詰めたわけですね。人気もさることながら、貴社は合格率も平均以上と聞き及んでいます。高い合格率の理由はどこにあるのでしょうか。

「これが合格の決め手」という必殺技のようなものはないんです。すべてを誠実に一生懸命、凡事徹底しているだけです。私は裏技で成績を上げても、一時的な効果しかないと思っています。いい成績を継続してもらうためには、講師もテキストも全部しっかりする必要があるのです。品質の評価基準を定めて、それを上回るものを提供し続ける。そして毎年少しずつ改善していく。この繰り返しを妥協なく続けてきた結果が、合格率の差にあらわれているのだと確信しています。

当たり前のことを全部やる。これが高い合格率の秘訣なのですね。凡事徹底しつつも、貴社では講師をアニメキャラクターにするなど先進的な取り組みをされているかと思います。業界内では反対の声も多かったと思いますが、それでも進み続ける山田社長の行動の源泉を教えてください。

教育をエンタメ化するなんて言語道断と業界での風当たりは強かったです。しかし生徒に、朝から晩まで真面目に勉強しろといってもやらないですよね。今の世の中もっと面白いエンタメが身近にありますし、エンタメ関係者はユーザーをハマらせるのがとてもうまい。1人の人間の限られた時間をゲームではなく勉強に割いてもらうためには、勉強も楽しいと思ってもらわないといけないんです。週に1,2回しか会わない予備校講師が、生徒のマインドを変え、時間内で成果を上げてもらうためには周囲の反対くらいで良い取り組みをやめてはいけないと思っています。それくらいの覚悟がないと生徒に結果を出してもらうことはできないんです。新しい取り組みをするときに風当たりが強いのは当然です。それでも生徒から「合格しました」「ありがとう」と言ってもらえればいいと思いますし、私はそれを一番に考えるべきと思っています。業界のメンツではなく生徒のために。教育は高尚なものという風潮から脱却して、これからも生徒に面白いと思ってもらえる授業を提供していきます。


勉強のライバルはゲームやアニメといったエンタメなのですね。山田社長は途上国で学校建設をなさったり社会貢献活動にも熱心ですよね。活動の軸というのはあるのでしょうか。

27歳の頃から予備校講師として様々な仕事をいただいており、アルバイトなのにエリートサラリーマン並みの稼ぎがありました。おかげでお金もどんどん貯まっていくのですが、若い頃からお金にはあまり関心がなかったんです。お金を持つとろくなことがないと思っていましたから。だからといってお金を捨てるわけにもいかないので寄付をはじめたんです。若い頃はフォスタープランという今でいうユニセフのようなところに寄付をしていて特に軸というものはありませんでした。10年くらい前からは自ら世界中の学校に赴いて学校建設に協力しています。今では私が建てた学校に4,000人近い子供たちが学校に通ってくれています。

日本のみならず、世界中に学びの輪を広げていらっしゃるのですね。学校建設をしている中での印象的なエピソードを教えてください。 

価値観が180度変化したエピソードがあります。学校建設をはじめた頃、私は現地にはいかずに社員に任せていました。学校が完成した後のことです。社員からこんな相談を受けました。「学校運営がうまくいきません」。その学校は9つの村からなっていたのですが、村人同士の仲が悪く学校運営がうまくいかなかったのです。それならと、私は建設した学校に村人全員を集めて宴会を開くことを思いつきました。村人600~700人規模の大宴会になったのですが、一切の費用は私持ち。ただ、明日の食事にも困っている村人たちですから、宴会中は村人みなが涙を流し、いがみ合う村長同士が抱き合う大盛況となり、学校運営も軌道に乗せることができました。そして会計です。数百人規模の宴会ですからそれなりの金額を覚悟していたのですが、蓋を開けてみるとかかったのはたった40万円。実は夜遊びで散財していた時期もあるのですが、この経験以降自分のお金の使い方が無駄であることに気が付き、一切の夜遊びを断ち切りました。たった40万円でこれだけ感謝してもらえるのであれば絶対にこういうお金の使い方をした方がいい。考えが180度変わったんです。それからは学校建設支援に自分のお金を使うことにしています。

まさに村人たちと山田社長両方の人生を変えたエピソードですね。最後に読者の方に一言お願いします。

 学校建設を通して思うことは世界にはすごい人がたくさんいるということです。すごいというのはお金持ちだとか、社会的地位が高いという話ではなく、人間としての度量がすごいということです。明日の食べ物の保証すらない生活でも、親を亡くした子供を見れば「かわいそうだから」という理由だけで養子にしたり、損得勘定なしに困っている人を助けたりしている人がたくさんいます。私はそんな人たちとたくさん出会っていきたい。ただ、日本だけで生活しているとなかなか損得勘定なしの関係を築くことは難しいと感じます。なので、これから日本を背負っていく世代のみなさんには特に、世界に目を向けていただき、人間本来のすごさを持つ人とたくさん出会ってほしいと思っています。

インタビュー後記

山田社長は人当たりもよく時には笑い話もはさみながら、終始楽しい雰囲気の中でインタビューをすることができました。たとえ話もわかりやすくさすがカリスマ講師といったところです。ただ裏では尋常ではない努力をされており、才能だけで今の人生を歩んでいるわけではないことも伝わってきました。インタビュー中、「自分への厳しさが社会の繁栄の根本」という山田社長の言葉がありました。日本のGDPがドイツに抜かれ世界4位になってしまった今、いま一度自分自身を省みて妥協せずに努力ができているのか、私も含めて日本人一人一人が胸に手を当て考える必要があるのではないでしょうか。

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