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工務店売却を考えています。
掲載日:2024/02/20
年商5億円程で利益は1000万円程、地域密着型で注文住宅、リフォームをメインに行っている工務店を営んでいるのですが、売却するとおおまかにいくらになるのかが知りたいです。借金は8000万円ほどあります。
※ 相談者のプライバシーに配慮し、実際の質問内容を一部改変して掲載している場合がございます。ご容赦ください。
一律に売却金額を線引きすることは困難です。
なぜなら、中小企業M&Aの売却金額は売手と買手の合意のみで決まるからです。
売手オーナーの中には、公認会計士が計算したファイナンス理論を駆使した株価を、M&Aの売却金額と考えている方もいるのですが、買手はそこではじき出された理論株価で買わなければいけないとは思っていません。
たとえ客観的には合理性を欠く方法でも、あくまで買手自らが決めた算出方法を使って「主観的に」株価を算定するのです。
それでは買手はどのような算出方法を使うのでしょうか。
これも買手によっていろいろな考え方を持っているのですが、多くの買手が活用するのは次の2つの算定手法です。
その1:年倍法
計算方法としては、「純資産 + 営業利益 × 1~5年分」というものです。
年倍法は理論的には資産が古ければ営業利益が増加するなど穴が多い計算方法ですが、
直観的でわかりやすいことから、中小企業のM&A価格を決める際に活用している買手が非常に多いです。
純資産は時価に、営業利益は節税経費や退任予定役員報酬を足し戻したりして修正を加えることが多くなっています。
また、1~5年という年数に根拠はありませんが、3年前後を採用する企業が多いのが実感です。
この先何年この営業利益が継続していくかを買手が主観的に判断して決めていくので、
M&A後に買手が対象会社(売手企業)をどれくらいうまく経営できそうか、年数はその自信の裏返しともいえるでしょう。
その2:EBITDAマルチプル法
計算方法としては、「EBITDA × 2~10倍 + 現預金等 - 有利子負債」というものです。
この倍率は買手が投資額を何年で回収したいのかによって変わってきます。
たとえば、投資を3年で回収しようと思っている買手であれば、倍率も3倍以下になりますし、5年で回収したいと思っている買手であれば、倍率は5倍以下になるといった具合です。
実務上は3~5年で投資回収を考えている買手が多く、倍率もMAX5倍と設定する企業が中心である印象です。
その他にも、社員1人あたり1,000万円や、1店舗あたり1億円など、M&Aの売却価格は買手によってさまざまな評価方法が存在しています。
今回ご相談をいただいた情報だけでは、参考となる数字を回答することはできませんが、中小企業M&Aにおいては、合理性よりもあくまで買手の主観によって売却価格が決められていると覚えておくとよいでしょう。
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