まちの仕事人インタビュー
世界に通用する企業を育てる
吉田信康税理士事務所 税理士 吉田 信康 (よしだ のぶやす) さん インタビュー

1960年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒業後、野村證券に8年間勤務。その後、一念発起して税理士を志し、税理士資格合格後、中野駅前で『吉田信康税理士事務所』を開設。税理士を続ける傍ら、母が権利を持つ借地の有効活用のため、家族信託を受け起業家支援アパートを建設し、転貸する『株式会社正直不動産』を設立する。税務関係の著書多数。

税理士の考える最適な起業家支援を

今の仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

野村證券で働く中、日本経済を盛り上げるためにも「起業家支援をしたい!」と強く考えるようになり、税理士を目指しました。数年かけて税理士試験に合格し、高い志を持って開業したものの、すぐに沢山のお客さまと出逢えた訳ではありません。当時は、税理士法による規制や、業界内での暗黙のルールがあり、広告には事務所名や住所、電話番号などの基本情報しか載せることができませんでした。事務所の強みや、業務内容を発信することすらできなかったため、新規開拓は銀行などの金融機関からの紹介や、口コミに頼ることしかできず、数年間はギリギリでやっていましたね。発信ができないことで、自分の強みや想いが伝えきれず、私がやりたいと思っていた起業家や中小企業を支援する仕事は、すべて大きな税理士事務所が携わっていました。今思えば、お客さまの方で税理士を選ぶ際に比較できる情報が、事務所の大きさ程度しかなかったので、仕方のないことです。転機は2001年にあった税理士法の改正。それまでの広告の制限が撤廃され、事実上自由に営業活動をすることができるようになりました。早速私も事務所のホームページを作り、自分の強みを広くアピールすることで、多くのご相談をいただくようになったのですが、実はお客さま以上に反響が大きかったのが業界内の税理士たち。法改正についていけない税理士や、暗黙のルールの継続を希望する税理士から、自分たちの仕事が脅かされるという不安もあり、さんざん叩かれました。時代の流れと共に、そんな話をする税理士は減りましたが、未だに多くの税理士がホームページを持っていません。要するに、新しいことが苦手な業界なのです。私の方はというと、ホームページからの集客に加え、セミナー講師書籍の出版をしたことで、ありがたいことに、お客さまが増え、25年目を迎えました。


仕事の特徴はどのような点にありますか?

法人の税務や会計業務、コンサルティング、起業家支援を行っています。また、95歳の母から受けた『家族信託』に当事者として取り組み、さまざまな法令の確認と、家族信託のメリット・デメリットなどを把握することができたため、その経験を活かして、お客さまからの相談にも乗っています。また、私が家族信託で受けた借地に、起業家支援のアパート「メゾンKAKINOKI」を建てました。起業家が孤独を感じることなく、自分のできないことを補完し合う仲間たちと一緒に暮らすことで、イノベーションが生まれるスペースになることを望んでいます。みんなで顔を合わせて仕事のできるコワーキングスペースや、疲れを癒すためのウッドデッキも作りました。契約期間は2年間としており、起業後の重要な最初の2年間で何とか事業を軌道に乗せてもらいたいと願っています。そのサポートの一つとして、最初の2年間は私が無料で税理士としてサポートにつきます。つまり税理士顧問付きアパートですね。合わせて、このアパートをサブリースする会社として「株式会社正直不動産」を設立。脱サラ当初からの「起業家支援をしたい!」という夢がようやく叶いかけています。おこがましいですが日本からGAFAMに負けないような世界に通用する企業が出てくるように、起業支援をしていきたいと考えています。過去に有名な漫画家が集まり、お互いを高め合った「トキワ壮」のような場所になると嬉しいですね。



正直に、真っ当に

どんなお客さまが多いですか?

『税務』や『会計業務』など、多くの法人のサポートをしています。本当に「会社を大きくしたい!」「この事業を世間に広めたい!」という熱のある経営者の方とのやり取りは、心が熱くなり、本当に楽しいですね。直近の実体験を伝えられる『家族信託』についても、まとまった資産を保有する80代~90代の親を持つ人からの相談が増えています。家族信託は、様々な業界の法令が絡み合ううえ、銀行などの金融機関や不動産業界のルール整備が遅れているうえ、現場の担当者の知識が不足していることも多いので、正直かなり大変です。かなり大変ですが、これを放っておいてしまうと、さらに大変な状況が長く続いてしまう恐れもあるため、少しでも気になることがあれば、是非ご相談ください。

仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。

“正直”“真っ当”に仕事をすることを心がけています。もうずいぶん前になりますが、パソコンの会計ソフトの発売を受けて、法人や個人事業主向けに『会計ソフトの使い方セミナー』を開催していたときのこと。他の税理士から「そんなセミナーは辞めろ」という暗黙のプレッシャーを感じました。一般企業や個人事業主が自分たちで税務関係の書類を作れるようになってしまうと、税理士の仕事が減って困るからという理由です。私は愕然としました。こうした考え方をしている税理士が企業に絡んでいるから、世界に通用するような企業に成長していないのでは?と気づいたのです。AIが経理処理代行する時代はいずれきます。税理士もそこだけの儲けばかり考えていては、企業にとってもよくないと思うのです。そういう税理士は常に過去のことばかり考えています。経営者は常に未来のことしか考えていないのです。しかも、経営者は、大きなリスクを抱えながら、本気でビジネスを広げて、日本を変えようとしている志の高い人たちです。その強い想いを持つ人たちをサポートする私たち税理士も、同じように高い志を持つ必要があるのではないでしょうか。私は、常にお客さまに対して、“正直”で“真っ当”に仕事をしてきました。これからもこの幸せな働き方で、起業家や中小企業をサポートしていきたいですね。


インタビュー後記

決算書や確定申告など、過去しか見ない業界と言われ、未来へのサポートが苦手と思っていた私の税理士像を、見事に覆したのが吉田さんだ。その思考は、税理士業界内にとどまることなく、日本の社会全体を見据えた大きな視点を持っている。税理士を選ぶポイントは、事務所の大きさや、業歴の長さだけではない、大切なのは熱量と想いだ。

お問い合わせ

名前:吉田信康税理士事務所

HP:https://www.yoshida-tax.jp/

*ご相談の際は、『中野区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。