勝つために走ってきた人が、今は“みんなで楽しい”を本気で考えている
大阪・吹田市。都会に近いのに、どこかのどかで、無理に背伸びしなくても心地よく暮らせる街だという。
そんな吹田で生まれ育ち、今もこの地で建設資材の販売会社を率いているのが、秋葉勇人さんだ。
現在47歳。家業を継ぎ、年商約20億円、社員約25人の会社を担う社長である。
こう聞くと、いかにも“やり手の経営者”を思い浮かべるかもしれない。ピリッとしていて、数字に厳しく、隙がなさそうなタイプ。
けれど実際にお会いすると、そのイメージはいい意味で裏切られる。
まず、やわらかい。話し方にどこか親しみがある。そして、ちょいちょい面白い。さらに、ご本人いわく周りからは「優しいと甘いの間ぐらい」と言われるらしい。社長としては少し複雑そうだったが、部下からしたら、たぶんかなりありがたい存在だ。
その一方で、秋葉さんの根っこには、ずっと一本筋の通った“努力”がある。明るくひょうきんな少年時代を過ごしながらも、小学校の頃はよく勉強した。得意科目は国語。子どもの頃に夢中だったことを尋ねると、スポーツでもゲームでもなく「勉強してましたね」と返ってくるあたり、なかなか渋い。
ビックリマンシールは“人並みには”買っていたそうなので、安心してほしい。ちゃんと子ども時代も送っている。
そんな秋葉さんの価値観に大きな影響を与えたのは、お父さまの言葉だった。
「将来に備えて準備しろ」
「頭の中身は人に盗まれない」
なんとも強い言葉である。財布を落とすことはあっても、知識までは落とさない。そう考えると、勉強とはずいぶん堅実な資産運用だ。

氏名:秋葉 勇人(あきば はやと)
年齢:47歳
居住地:大阪府吹田市
職業:アジック株式会社 代表取締役
事業内容:建設資材の販売(塗装・屋根材など、建物の改修・リニューアル関連)
従業員数:約25名
年商:約20億円
“将来のため”に走ってきた男が、ある日ふと立ち止まった
秋葉さんは長いあいだ、「将来に備える」という考え方の中で生きてきた。努力すること、準備すること、上を目指すこと。それは間違いなく、自分を育て、今の立場へと押し上げてくれたものだった。
けれど38歳の頃、心の中にふとこんな問いが生まれる。
「俺の将来って、いつ来るんやろう」
これが、最初の大きな分岐点だった。
将来のために、将来のために、と走り続けてきた。でも、その“将来”は、いつまで経っても未来のまま。準備ばかりしているうちに、人生そのものが終わってしまうんじゃないか――。そんな感覚に襲われたという。
そして40歳前後、「人生を180度変えてやろう」と一気に動く。時代は仮想通貨ブーム。やったことはない。でも、やってみなければ何も変わらない。
その結果はどうだったか。ご本人の表現を借りれば、
「焼け焦げた」。
なんとも絶妙な言い回しだが、要するに全財産が吹き飛んだ。
普通ならここで心が折れてもおかしくない。だが秋葉さんは、そこで終わらなかった。むしろ人生は、そこからさらに大きく動き始める。
屋根から落ち、肺炎になり、それでも前を向く。人生はなかなか忙しい
コロナ禍の頃、秋葉さんは屋根から落ち、肺炎にもなり、何度か“死にかけた”という。文章にすると壮絶なのに、ご本人が淡々と語るので、一瞬こちらの感覚が追いつかなくなる。人生のイベント数が多い。
そんな時期に出会ったのが、これまで縁のなかったヒーリングやスピリチュアルの世界だった。
商売人の家に生まれ育ち、現実の中で生きてきた人が、体や心を整える世界へ一気に振り切れた。まさに“物理”から“見えないもの”への大転換である。
ただ、秋葉さんはそこで終わらない。今度はスピリチュアルに全振りしたあと、再び現実へ戻り、その両方を統合しようとしている。
「物理に全振りして、スピリチュアルに全振りして、また戻してきてる」
この説明が、妙にわかりやすい。
現実の経営には、理想だけでは回らない厳しさがある。
社員には幸せでいてほしい。でも会社である以上、数字も必要だ。その現実と、人を癒やしたい・助けたいという理想。
その間で揺れながら、二つを切り離すのではなく、どう結び直すかを考えてきたのが秋葉さんなのだろう。
しかもこの人、最近の趣味が登山と温泉宿、神社仏閣めぐり、そして滝行である。
もはや“社長の休日”の情報量ではない。
滝に打たれている間は無になるのかと思いきや、「今は無になるというより、世の中への感謝を感じるようにしている」とのこと。
しかも「全部に感謝し終わるまでやってる」。なかなかの本気度だ。
こちらが温泉で「はぁ~」と言っている頃、秋葉さんは滝の下で人生を整えている。

社長の夢は、売上70億円。その先に見ているのは“国づくり”
今の秋葉さんが仕事で見ている景色は、かなり高い。会社を見るのは当然として、その先に複数の会社、グループ、業界全体、さらに世の中へ――と、視座をどんどん引き上げようとしている。
現在の年商は約20億円。そこからまずは50億、さらに70億へ。数字だけ聞いても十分に大きいが、秋葉さんにとってそれはゴールではない。
大事なのは、物理を動かすこと。売上をつくり、組織を育て、現実に影響を与えられる力を持つこと。
その先に初めて、社会や国を動かすような大きな仕事が見えてくると考えている。
スケールが大きい。でも、不思議と大げさに聞こえない。なぜなら、秋葉さんは“言うだけ”で終わらないからだ。
学んだことをすぐ会社に持ち帰り、営業会議で試す。できなかったことをそのままにせず、「じゃあ次はどうする」と実験する。
この“即実行”こそ、秋葉さんらしさなのだと思う。
目標があると燃える。学びを試したくなる。できなかったことをできるようにしたくなる。そんな話をしている時の秋葉さんは、きっと社長というより、挑戦を楽しむ少年に近い。明るくて、少しひょうきんで、でも本気。だから周りにも人が集まるのだろう。

「勝手に楽しい時代になるよ」――その言葉が軽く聞こえない理由
これからの時代を担う人たちへ伝えたいことを尋ねると、秋葉さんはこう語った。
「心配しないでも、勝手に楽しい時代になっていくよ」
一見すると、ずいぶん楽観的な言葉に聞こえる。けれど、その背景には、痛みも失敗も葛藤も経験してきた人の実感がある。
努力しないでいいと言っているわけではない。むしろ本人は努力してきたし、今もしている。
ただ、それでも世の中の流れ自体は、少しずつ“苦しまなければ得られない”時代から、“楽しく生きることが価値になる”方向へ向かっていると感じているのだ。その考え方は、どこか秋葉さん自身の変化とも重なる。
人に認められるために頑張る。成果を出さなければ存在してはいけない気がする。そうやって築いてきた今がある。
けれど次に進むには、その頑張り方を一度手放し、もっと自然で、もっと健やかな形へ変えていかなければいけない――。
「僕が幸せになるために、みんなで幸せになろう」
この言葉は、きれいごとに見えて、実はとても現実的だ。周りがしんどいのに、自分だけ楽しいわけがない。
だから一緒に楽しくなる方向へ進もう。そういう発想だ。
優しい。けれど甘いだけではない。ちゃんと現実を知っていて、そのうえでなお人の可能性を信じている。絵に描いたような良い人、という言い方は少し陳腐かもしれないが、秋葉さんには不思議とそれが似合う。努力の人でありながら、最後はちゃんと人に向く。その姿勢こそが、この人のいちばんの魅力なのだと思う。

インタビュー後記
秋葉さんは、社長であり、挑戦者であり、探究者であり、たぶん相当な努力家だ。
そして何より、“人が楽しく生きること”を本気で信じている人だった。
仮想通貨で焼け焦げても、屋根から落ちても、滝に打たれても、また立ち上がって前に進む。なかなか真似できる生き方ではない。
でも、その不器用なくらいまっすぐな姿に、こちらまで背筋が伸びる。
善人承継は、そういう“良い人”の思いを次へつないでいくプロジェクトだ。
こんな素敵な秋葉さんから、次はどんな素敵な人へバトンが渡るのか。
その先にきっとまた、わくわくさせてくれるような新しい物語が待っている気がする。
さあ届け、広がれ、善人の輪!
山元 直樹
2026/03/24(火)