まちの仕事人インタビュー
言葉で情景を伝える
アナウンサー・パーソナリティ 須藤 悟 (すどう さとる) さん インタビュー

1967年生まれ。神奈川県平塚市出身。ケーブルテレビ局から地方放送局を経て、フリーのアナウンサーとして活動中。現在「かわさきFM」「文化放送」「TokyoFM」「フジテレビONE」「FM  Haro!」「バスケットLIVE」の番組を担当。川崎フロンターレ、川崎ブレイブサンダースのラジオ実況担当としてもおなじみ。趣味は、バイクと飛行機に乗ること。

工夫して伝えることの面白さ

この仕事を始められたきっかけを教えてください。

中学生くらいから、机に置いてあったラジオを聴き、“いつかラジオの野球中継をやりたい!”と考えるようになりました。当時は、NHK横浜放送局が土曜日にリクエストアワーという公開放送をやっていたので、それを観によく関内の放送局まで通っていましたね。アナウンサーになるという夢を叶えるため、大学入学後にアナウンサーの専門学校へ入学。平日の日中は大学、平日の夜と土日は専門学校に通う生活をしばらく送ることに。当時、大きな放送局は六大学の生徒を中心に採用していたため、遠征して地方の放送局の就職試験をいくつも受けました。バブルがはじけた直後でしたが、地方でもアナウンサーの採用があった時代。交通費を稼ぐために、イトーヨーカドーでアルバイトもしていましたね。しかし、残念ながらテレビの放送局はすべて不採用。卒業後、一般企業に就職したものの、その後地元の平塚にケーブルテレビ局ができると聞いて転職を決意し、ついに放送局への就職を果たしました。その後、ケーブルテレビの仕事に慣れてきた頃に、改めてラジオ放送への熱が上がることになります。その想いを手紙に書き、お世話になっていた人に届けたところ、エフエム青森が急遽アナウンサーを探しているという情報とご縁につながることに。「明日から来れるか?」と誘っていただき、最短で荷物をまとめて青森へ行き、ついに念願のラジオデビューを果たしました。結婚もしていて、全く土地勘も何もない場所でしたが、文句も言わずについてきてくれた妻には、本当に感謝しかありません。その後、フリーのアナウンサーとして神奈川県に戻り、「プロ野球ニュース」などを担当された押坂忍さんと同じ事務所へ所属。現在まで多くのご縁からお仕事をいただいており、かわさきFMとはもう20年くらいの付き合いになりました。川崎フロンターレの実況も15年ほど担当しています。

仕事の面白い部分はどのような点にありますか?

一番は、“工夫して伝えること”の面白さですね。ラジオは映像を見せることができません。そのため、どのように伝えると、視聴者の方により伝わりやすいのかという部分にこだわっています。正直このノウハウについては、これまで誰かから教えてもらえる環境はなく、私の場合、他局のラジオを聴いて表現を磨くなど、完全に独学です。良いフレーズを聞いたらメモしておき、後日それを自分の放送で活用することもあります。アナウンサーの仕事は、いつも刺激的で面白いのですが、実は少し苦手なこともあります。それが、選手の数シーズン前の成績など、これまでの積み重ねや、過去の成績をパッとその場で引き出して話すこと。年齢的なものもあるかもしれませんが、性格的に少し暗記を苦手としているので、それらをまとめた資料はいつも手元に用意しています。また、この仕事には“普通だったら知りえないことを知れる”という面白さもあります。例えば、芸能人の方がスタジオにいらっしゃった場合、マイクがオフになっていたり、放送中ではないときの素の姿を見ることができるのは、アナウンサーの特権です。ちなみに、これまでにご縁のあった芸能人の中で、最も気さくで印象が良かった人は『西城秀樹』さんで、さりげなく周囲に気配りができる本当に素敵な方でした。その他に『篠原ともえ』さんも、とても感じの良い人でしたね。昔は大手放送局へのあこがれもありましたが、現在は地方放送局ならではの、濃い情報が発信できることを楽しみながら、地方を応援するアナウンサーを続けています。


何事も興味を持ち、これからも続けていく

仕事をするうえで心がけていることはありますか?

まずは、“何にでも興味を持つこと”。仕事の依頼は多岐にわたり、時には自分がそれまでに関心を持ったことのないものについて話す機会があります。そんなときに、食わず嫌いすることなく、興味を持ち、そのものの良さをできるだけ引き出せるように伝えていきたいと考えています。もう一つは“長く続けること”。今関わっている、サッカーとバスケットボールの実況は、これからも続けていきたいと考えています。サッカーの実況からは多くのことを学びました。例えば、実況を始めたてのころ、「選手を把握するのに背番号を見るな」と言われ、背番号で選手を覚えるのではなく、体格や走り方で覚えろと指導されました。確かにそれができるようになると、プレーの瞬間に誰が関わっているかが分かるようになり、実況の精度が格段に上がります。川崎フロンターレにいた中村憲剛選手の走り方の特徴などは、自分で真似できるようになりましたね。サッカーの実況の場合、試合の1時間半から2時間前には等々力競技場へ入るようにしています。実況の際に手元に置いているものは、フロンターレ関係の新聞記事の切り抜きと、選手の一覧、当日の予想フォーメーション。放送前の段取りや準備についても、サッカーの実況で磨かれました。実況した試合のうち、記憶に残っているものは、大久保嘉人選手が、日本人のJリーグ通算得点記録でトップとなった得点を決めた試合。その他にも数多くの感動を視聴者に伝えてきました。これからもアナウンサーの仕事をできる限り続けていきたいですね。


インタビュー後記

文字で伝えられないのが残念なほど良い声の持ち主である須藤さん。ベテランのアナウンサーらしい穏やかな口調でお話いただきました。熟練のテクニックが詰まった、かわさきFMでの川崎フロンターレの試合実況は必聴。ちなみに、子どもの頃に夢だったラジオでの野球実況は、愛知県のコミュニティFMにて、高校野球を担当したことで叶えられたそうです。

お問い合わせ

名前:須藤悟

お問い合わせ:区民ニュースまで

*ご相談の際は、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝えください。