友達がたくさんといると煩いが増える

 

  初期仏典のひとつに『スッタニパータ』という経典があります。スッタは「お経」、ニパータは「集まり」と言う意味で、『経集』と訳されたりします。日本では主に『法華経』や『無量寿経』、『般若心経』などの大乗仏教の経典が寺々で読誦されますので、仏教に馴染みのある方でも聞いたことがないという方が多いのではないでしょうか。お釈迦さまが説かれた最古層に位置する経典で、最も肉声に近いお経であるとも言われております。


  全部で5章、72編ある経典ですがその中に「犀の角」という1編があります。ドイツの哲学者ニーチェにも影響を与えたとされる小編で、『ブッダのことば』(岩波文庫)でも文字数にして約3,000字の短いお経です。


  このお経の中で、お釈迦さまは明確に「仲間といると煩いが増えるから犀の角のようにただ独り歩め」と伝えます。換言すれば「友達なんかなくてもいい。むしろ一人で生きろ」と積極的に孤独になることを勧めているのです。それも何度も何度もリフレインのように説き続けます。


  仏教と言えば「和を大切にすること」や「慈しみの宗教」と言われています。和や慈しみを大切にすることはその通りですが、初期仏典では「和を大切にして自己を犠牲にする危険性」を指摘しているのです。


  お釈迦さまは説きます。


  「仲間の中におれば、休みにも、立つにも、行くにも、旅するにも、つねにひとによびかけられる。他人に従属しない独立自由をめざして、犀の角のようにただ独り歩め。」


仲間が多くて自分の時間が取れず結果、身体を壊してしまう。友達が多くて自分を犠牲にして、結果仕事がうまくいなかなくなる。これではなんのための友達かわかりません。自己犠牲をともなう付き合いは大いに考えなくてはいけない問題なのです。


(続く)