デスクワークが長いと、腰痛や肩こりが出てしまうことが多いものです。積木を積み上げるときのことを想像していただければわかると思いますが、もっとも崩れにくいのは、まっすぐに積み上げたときです。斜めに積み上げると崩れやすいのです。立つときや座る時もそれと同じで、重心が真ん中の一点に集中するようにまっすぐに立ったり座ったりすれば、余計な補正の力が要らなくなり、疲れにくくなります。ところが、いざ始めてみると「まっすぐ」が結構難しかったり大変だったりするのです。


一番わかりやすいのは、ドラえもんのタケコプターのように、頭の頂点が天から吊るされているようなイメージで座ることです。天から強い力で引っ張られているように、もしくは1mmでも座高が高くなるような姿勢をとってみてください。そうすると股関節は90度くらいの角度になり、骨盤が立って坐骨で座るようになり、背もたれにもたれることもなくなります。さらに肩の力が抜けて顎が引けていれば理想型です。間違いなく背すじは、まっすぐに伸びています。首の骨がまっすぐに並んだストレートネックという言葉をご存知の方がいるかもしれませんが、ここでいう背すじのまっすぐは、背骨のまっすぐとは異なります。理想的な座り方をした時には、脊骨は緩やかなカーブを描いており、それはきれいなものです。


 

左が背すじがまっすぐの正しい姿勢で、右が悪い姿勢であるのは、いうまでもありません。しかし普通の方であれば、通常は右の悪い姿勢で過ごしているのが自然ではないでしょうか。そして、気がついた時に左の正しい姿勢に直す。どんな座り方であっても、同じ姿勢を続けていれば筋肉が固まってしまい、その結果、疲れてしまうのです。だから、左右の姿勢を交互に繰り返して運動にしてしまう。私は今まで長いこと、そのように指導してきました。しかし、左右の姿勢を交互に繰り返せば、腰痛の予防にはなるでしょうが、筋肉が発達して姿勢が良くなるかといえば、そうではなさそうです。なぜならその動きは、とても筋トレとはいえないからです。


背すじがまっすぐの正しい姿勢で座り続けるのは、現実的ではなさそうです。正しい姿勢で座るということは、筋力がついて慣れてこないと、とても疲れるからです。その手助けとして、背もたれにタオルやクッションをはさむと良いでしょう(左図)。多くの椅子の背もたれは、もたれやすいように少し斜め後ろに角度がついています。その斜めの分をタオルで補正することで、背すじがまっすぐになるのです。また、もう1つの方法として、お尻の後ろの方にタオルを置き、そこだけ高くして座る方法もあります(右図)。こうすることにより、骨盤が立ち、上半身の重みを坐骨でしっかりと受けることができます。骨盤が立つことで、背すじがまっすぐになるのです。

 


究極の猫背矯正筋トレ

猫背になっている自分に気づいた時に姿勢を正す、それはそれでいいと思います。しかし、なるべく猫背にならないようにできないものでしょうか? そのための筋トレを考えてみました(本邦初公開です)。それは、地面から足を持ち上げて座ることです。床につけている足をできるだけ高く上げてください。背骨の前にある腸腰筋という筋肉が働きます。たいていの方は、腸腰筋の筋力が弱いので、バランスを取るために体が少し後ろに倒れてしまいます(下図のピンクの線)。最初はそれでも仕方がありません。もちろん、足を持ち上げたままで持続させることはできませんから、気がついた時に筋トレとしてやれば良いかと思います。実はこの足を持ち上げた状態で猫背にする方がもっとつらいのです。ですから必然的に背すじがまっすぐになるのです。


 

猫背を直すための筋トレといっても、なるべく見栄え良くスマートに行いたいものです。そこで、体が後ろに傾かないための修正プログラムを用意しました。足を持ち上げて座ることは同じですが、そのときに持ち上げた足を後方に引いて膝を少し曲げるのです(左図)。もしくは、イスの座面に手をつくことでバランスを取るのです(右図)。さあ、これなら普通に座っているのと大差なく、パッと見でわかりません。さっそく始めましょう、まずは床から足を持ち上げてください。



 

監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

アレックス脊椎クリニック  https://ar-ex.jp/spine

黒河内病院  https://kurokouchi.or.jp/index.html

腰博士 https://koshihakase.com

M+ POWER https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

  ※脊柱管狭窄症を自力で治す[扶桑社] 5/11発売中!  購入ページはこちら