腰痛予防法

私のクリニックには腰痛で困っている患者さんが多数受診されます。病気が原因で腰が痛む方はやむを得ませんが、実は病気ではないのに姿勢が悪かったり、腰の使い方が不適切なために腰痛を生じている方々がたくさんいらっしゃいます。私はフィットネストレーナーもやっている脊椎外科医ですので、腰の使い方という観点から「腰痛予防法」について説明していきましょう。


腰痛がある人の年齢分布を見てみると、高齢の女性では骨粗しょう症が原因で腰痛の割合が高いのですが、それを除くと、若者から高齢者までそれほど大きな差がありません。それでは、なぜ腰が痛くなるかと言うと、その人の限界を超えた負担がかかるからなのです。その限界は、年齢によって異なるのは当然ですが、年齢相応を超えた負荷と考えてください。


猫背姿勢

年齢を問わず腰痛の予防で大切なのは姿勢です。なかでももっとも避けたいのが高齢者の「猫背姿勢」です。日常生活では意識していないと知らず知らずのうちに猫背姿勢になっていることが多いものです。例えば、物を拾うとき、物を持ち上げるとき、中腰でいるとき、顔を洗うときなど、挙げるとキリがありません。もちろんそれらの全てがダメなわけではありませんが、とくに立っている時に前かがみになると、腰の骨や筋肉にかかる負担が激増します。それによってからだを壊すと腰痛が生じるわけです。急激に力が加わったときには、ぎっくり腰と言われるように、一瞬で腰痛が生じてしまいます。また、長時間前かがみ(中腰姿勢)でいると、その時はなんともなくても、後で腰が痛くなり、しばらくは身動きが辛くなります。


図1:猫背姿勢で頭が前方に出てくると、腰に過度の負担がかかります


背すじを伸ばしてお尻を突き出す意識

そのような憂き目に遭わないようにする対策として、前かがみの姿勢が必要なときには、できるだけお尻を後ろに突き出して体の重心が前方に移動しないように心がけることです。それによって体の重心が移動せずに安定するので、腰痛が起こる率を軽減させることが可能になります。前にかがむ必要がある時には「背すじを伸ばしてお尻を突き出す意識」これが最も大切です。


図2:お尻を後ろに突き出せば、頭が前に出てもバランスがとれます


同じ姿勢で固まらない

腰痛の予防で2番目に大切なのは、同じ姿勢で固まらないことです。立ちっぱなしや座りっぱなしなど同じ姿勢でずっといると、姿勢を保つための筋肉(脊柱起立筋)がいつも収縮して突っ張ったままになってしまうので、筋肉が疲弊して腰痛をきたします。もしくは椎間版や腰を動かす関節(椎間関節)にストレスがかかりっぱなしになるので痛みを生じます。それを避けるためには、こまめに体を動かして姿勢を変えることです。おへそを前に突き出したり、後ろに引っ込めたりする前後の動きは最も簡単にできます。側屈運動といって、体を左右にそらせるのも容易でしょう。さらには、捻転運動で体幹を捻るのもよいでしょう。そのような動きを1時間に1回くらい、可能であれば30分に1回くらい取り入れるのがお勧めです。


腰痛を経験したことがない人はいないといわれるほど、腰痛はメジャーな悩みです。朝晩の歯磨きと同じように、お尻を突き出してかがんだり、こまめに腰をくねらせる体操を行ったりすることが習慣化すれば、腰痛で困ることはほとんどなくなるといっても過言ではないでしょう。


監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

腰博士  https://koshihakase.com

M+ POWER  https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

  ※脊柱管狭窄症を自力で治す[扶桑社] 5/11発売予定  購入ページはこちら