偶然出来た品。

毎年シュトーレンの作り方を変えている。

発見が好きなのだ。
元々は『超』が付くくらいシンプルな
シュトーレンを作り始めたのがきっかけだった。

作っていて思い始めた事が、
個性は何で出てくるのだろうと言う事だ。

パン作りの場合
パンの個性は、
形、具材の使い方、粉の選び方、製法、発酵の取り方、菌の優劣バランスの構成、生地の溶かし方、等でお店の個性を表現できる。

シュトーレンを伝統的製法
と言う作り方を重んじると
きっと個性よりか伝統的が大事なのかもしれない。

そこで、他のお店様の色々なシュトーレンを食べていて、
ケークっぽい。
パンっぽい。
しっとり系
ほろほろ系
具材マシマシ系
具材シンプル系
粉糖コーティングマックス系
表面仕上げ無し系

色々と素材と、作り方で表現をしている事が見えてくる。

ムラタは、名刺にも書いているのだが、
パン職人とは名乗っていない。

発酵職人と言う肩書を使わせて頂いている。

そうなのだ。

発酵が好きなのだ。

そこで、今年のシュトーレンは、
パネトーネ作りで学んだ、
リエビトマードレと言う種を使う事にした。

イーストを使わない訳ではない。

種に保存性と、風味を頼ったのだ。

パンっぽく仕上げて、時間が経つと
デンプンの劣化具合がモロホロ食感へと変化する。

今回は柑橘系をメインにしたお陰で、
皆さんの口の中の唾液を容易に引き出すことが出来る。

この唾液が最後の仕上げなのだ。
モロっとしたシュトーレンを皆さんの口の中で完結させる。

この消化液なのだが、無限に出続ける訳ではない。

この貴重な貴重な唾液が、表面を粉糖仕上げにすると、丸っと吸い込まれてしまう。
こうなってしまうと、

粉糖+唾液=シロップ状の液体
このシロップ状の液体がシュトーレンの母体に染み込んで咀嚼されると、ケークのような食感を助長する。

これはこれでもうケーキ的に美味しいのだが、

発酵の要素が出しにくいと考えてしまった結果。

表面は少量のオーガニック糖を付着させるだけに留めてある。

こんな事を書いていると
何て考えられた一品なのだ。

っと思う方もいらっしゃるかもしれない。

それは、大きな間違いだ。

ムラタは全てを知った上で作っている訳ではないのだ。

作ってこれは『有り』 『無し』の延長線上に『有りかも』を見出して
終着点を見つけたと思い込んでいるだけなのだ。

だから、2024年のシュトーレンは2025年にはもう出ないだろうし。

食べる方にとっては、ムラタのエゴが奇抜すぎると思われてしまったりもする。

それでも、
何か作っていて冒険心がくすぐられるような事をするのが、楽しい中年パン職人である。

シュトーレンは
ケーク寄りなのか
それとも
パンよりなのか

答えは

ない。

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262 いいね! ('24/12/09 14:01 時点)