新型コロナの影響でテレワークが流行していますね。今まで口先だけの「働き方改革」でしたが、これこそ本当の働き方改革になるかもしれません。コロナ禍で私のクリニックでも来院患者数は激減ですが、テレワークになったせいか腰痛が・・・と来院される患者さんは増えています。今回はテレワーク腰痛のメカニズムと対応につきお話していきます。


テレワーク腰痛①:同一姿勢で長時間はダメ

家にいて「長時間、机に向かって同じ姿勢でいる」というのがよくありません。人間は置物ではなく動物です。ですから、本来は動くようにできています。静止しているから、力は使っていないと考えるのは大間違いで、姿勢を保つための筋肉は無意識のうちに頑張って働いているのです。立っていても座っていても、その状態で脳卒中や心臓発作を起こせば倒れてしまうと考えれば、想像に難くないと思います。言葉を変えれば、同じ姿勢を続けていると、姿勢を保つための筋肉が絶えず収縮(緊張)しており、いずれは疲れ果ててしまうのです。


対策は、ある程度時間が経ったら、こまめに動かすことです。背伸びをしたり、首や腕を回したり、机から離れて屈伸運動をしたりします。ただ単にコーヒーを入れに席を立つというものでなく(ほとんど無意味)、なるべく大きく体を動かすのが効果的です。今はスマホにタイマー機能が当たり前のように付いていますから、タイマーを1時間おきにセットして、時間が来たら椅子から離れて体を動かす生活リズムを作ってみてはいかがでしょうか。


テレワーク腰痛②:猫背姿勢はダメ

悪い姿勢は腰痛を起こす最大の原因です。その悪い姿勢とはズバリ「猫背」です。腰が丸くなるのと背中が丸くなるのと、どちらが先かは定かでありませんが、最終形が猫背であることには変わりありません。猫背で背中が丸くなる分、5kg程度の重量がある頭が体の前に出てきます。重心が前方に移動すると、バランスを保つためには、体の後方にある筋肉が頑張らなくてはいけません。それによって、首の後ろの筋肉、背中の筋肉、腰の筋肉が常時突っ張って疲れてしまうのです。その疲れ果てた状態が腰痛(+肩こり)です。


猫背対策ですが、背すじを伸ばす意識を持つことが大切です。実際は、それは簡単なことではなく、「気がつけば猫背」はよくあります。しかし上記①と同じように気がついたときに姿勢を正すというのであれば実践可能と思います。次なる手は、椅子を変えることです。Googleが社内でバランスボールをイスとして使っていることは有名です。もしくは私のクリニックでも使用している骨盤が立つ機能的な椅子(アーユルチェアー: https://www.ayur-chair.com )を使ってみるのもよいかもしれません。難点としては、バランスボールでは筋力がない方では疲れてしまう、集中力が保てないなど。アーユルチェアーでは、正しく腰掛けないとやっぱり猫背になってしまうことが挙げられます。その対策としては、有用なアイテムと普通の椅子とを交互に使うのもよいでしょう。しかし、何といっても猫背は意識して背すじを伸ばすことが大切、そして別の機会で触れますが、背中の筋トレでしょう。


テレワーク腰痛③:コロナ太りはダメ

新型コロナの感染拡大を防ぐために、 外出自粛や在宅勤務が推奨され、スポーツクラブも閉店しています。それにより、多くの方で日常生活の活動量が減っているのは紛れもない事実です。それでいて、今までと食べる量は変わらない、なかには家飲みブームでかえってカロリー過多になってしまう輩もいるようです。そのような状態で太ってしまう人が続出し、誰が名付けたのか「コロナ太り」といわれるように・・。コロナウイルスが太るのでなく、「あんたが太る」という危機です。最新の報告・統計では、体重過多や肥満が腰痛の危険因子とされています。体重管理では、食事と運動に気をつけることが必要のなのはいうまでもありません。どちらか一方ではなく両方とも大切で、その比率は食事8割:運動2割といわれます。

食事では、摂取カロリーが過多にならないようにすることです。世の中では糖質制限や炭水化物ダイエットが流行っています。一時的に短期間行う分には効率が良い方法ですが、心血管疾患のリスクが上がるので、決して長期で行うものではありません。栄養学の鉄則は「栄養は満遍なく」ですから、食べ過ぎないようにして何でも食べることです。なお、GI値という代謝の観点からは、主食にパンは不利で、ご飯やパスタの方が太りにくいとされています(食べ過ぎは、なんでもダメです)。また白米よりも玄米の方が、体重コントロールに有利で太りにくいはずです。


運動は代謝を上げたり、筋力を維持する上で大切です。現在はスポーツクラブが閉まっているため、インターネットの動画サイトで、自宅でできる運動方法がたくさん紹介されています。普段ならば、パーソナルトレーニングでお金を払って教わるはずのノウハウが無料で閲覧できますのでチャンスです。カロリーを消費するという観点からは、スクワットなど、脚やお尻の大きな筋肉を使う運動の方が効果的です。そのかわり多少つらいですが、楽していい事はあり得ないと肝に命じる必要があります(つらい分だけ、喜びも大きいのです)。



監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

腰博士  https://koshihakase.com

M+ POWER  https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

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