Photo:長谷部ナオキチ
多くの業種、ビジネスに、
多大な停滞を巻き起こしたコロナ禍2020。
しかし、予想だにしなかった意識の変化や行動の変化が生まれたことも事実です。
マイナス要因をプラスに転じさせ、
未来をより良く変えようとする意志もまた、
コロナを経て高まっているエネルギーの一つ。
そんな世界に影響を与えるような
エネルギッシュな経営者を
区民ニュース編集長高木優一が掘り下げます。
◆GUEST PROFILE◆
鈴木亮平
Ryohei Suzuki
株式会社プラスロボ代表取締役
ITメディアの記者を経て、介護施設と隙間時間で働ける人をマッチングする介護版スキルシェア「スケッター」事業で2017年に起業。人手不足で困窮する介護業界にシェアリングエコノミーの概念を導入し、テレビやラジオでも話題に。日本が抱える高齢化問題という社会課題ど真ん中の解決に挑む27歳の注目すべき若手経営者。
コロナを経て気づいたこと、変化したこと
高木優一: 今回コロナでは、鈴木社長のスケッターも大きな影響を受けたと思います。介護施設等でお年寄りの方々と接することが仕事なのに、ほとんどの施設で家族ですら面会ができないという報道を見ました。サービスが根本からできないといった状況だったのではないでしょうか?
だけどこの状態がいつまでも続くとは思えないし、スケッターは今後100%必要とされるビジネスモデルです。だからこそよけいに、これからどうされていくのかに興味が尽きません。自粛期間中はどのようにされていたのかなども教えてください。
鈴木亮平: マスコミの注目もあり、年始の頃は成長が加速していました。今年は一気に事業を拡大するぞ、と意気込んでいたのですが、まさか2ヶ月後にそれが急停止するとは…。逆風を真正面から受けた感じで、正直大変でした。
ただ自粛期間中は悪いことばかりではありませんでした。
もちろん、スケッターの人たちが施設にお邪魔することはできませんでしたが、ネットを使って「介護施設にみんなでマスクを届けよう」という企画を思いつきました。それが拡散されたことで、スケッターを多くの方たちに知っていただく機会になったのです。マスクを通じて介護施設目を向ける人が増えたことで、結果的にスケッターの登録者は増え続けました。医療施設や介護・福祉施設の報道も多く、そこに関わる方々が社会の一端を支えている、ということも広く伝わりました。
高木優一: まさにそこですね。
「エッセンシャル・ワーカー」という言葉が使われるようになり、その必要性がクローズアップされました。介護職が今日の日本では重要で不可欠な仕事であるということを多くの人が再認識したと思います。3Kと思われがちだった仕事に光が当たり、見え方も変わってきたように感じます。テレワークを経験して通勤に疑問を持った人の中には、電車で揺られる数時間が使えたら、近所の介護施設で人に喜んでもらえる仕事ができると思った人もいたでしょうね。ギスギスした競争社会が嫌になり、おじいちゃんやおばあちゃんと接してほんわかしているのが好き。そんな自分に気付いた人が増えたのかもしれないですね。
鈴木亮平: 確かに移動には多くの時間を取られていて、それを続けることが果たして良いのか?と思った人は少なくなかったようですね。移動時間はまさに隙間時間になりうるので、当社の事業とその思考は相性がいいです。
スケッターに登録している人の中には、ふだんは大手企業でバリバリと営業をやっているような方もいます。そんな方は仕事というよりも自分を癒やすためにしている、というか、結果的に癒やされたと感じる方は少なくないと思います。介護施設でおじいちゃんやおばあちゃんと話したり、遊んだりすることがストレス解消になる。人や社会の役に立っているという実感も持てますからね。
高木優一: ストレス解消しながら報酬ももらえる。人様のお役にも立てる。いいですね。まさにコロナを経たこれからの未来で価値が高まる新しい働き方のひとつだと思います。
介護に関心を持つ20代が増加。高齢化社会はどのように変化するのか
高木優一: クラウドファンディングも始められたと伺いましたが、共感性のある事業なので親和性が高いのではないでしょうか。社会課題の解決は多くの方の共通テーマでもあるからスケッターは支持を受けやすいと思います。コロナでは多くの人が忙しい日常を中断されましたが、立ち止まって考える時間にもなりました。生活のためにあくせくと働くだけではなく、自分のため、人のために役立つことをしたい、という意識も高まりました。そこから見えてきたことや今後の展望についてお聞かせください。
鈴木亮平: クラウドファンディングは今回初めてのチャレンジでした。お返しはホームページでのロゴ掲載などを用意しましたが、弊社の場合はほぼ寄付という内容でした。残念ながら目標額には届きませんでしたが、相当額が集まりました。行動はすぐにできないけれど何か役に立ちたい、という人が増えているのを感じます。
コロナでは医療従事者や介護従事者が注目され、弊社への問い合わせやスケッターの登録も増加しました。内訳を見ると面白いことに20代が非常に多く、若い人たちの関心がこちらに向いてきていることを感じています。
介護施設の人手不足解消から高齢化社会全体に目を移すと、スケッターを必要としているのは施設だけとは限りません。高齢世帯の個人宅や居住者全員が高齢者というマンションも出てきています。そういった場面でもスケッターのサービスを展開できればと考えています。
高木優一: 介護保険でスケッターが利用できるようになる、という可能性はどうですか? そうなれば個人でも利用したいという方は増えそうですよね。間口が増えれば1時間だけ、2時間だけ、空いた時間に介護に関わりたいという方たちも確実に増えていくでしょう。高齢化が進み、お年寄りが増えても、そのときに若い人との接点がきちんとできていたら、今とは少し違う温度感を持った世界が見られるかも知れませんね。
鈴木亮平: すでに介護ヘルパーは、有資格者じゃなくてもできる方向で検討がされていると聞きました。もちろん資格の有無でやれること、やれないことは切り分けられると思いますが、有資格者しか働けないと言っていては、絶対数が足りなくなります。介護職のひとつとして見れば、保険でスケッターが利用できる可能性は十分にあると思っています。
ただ、制度や仕組みだけに頼るのではなく、想いのベクトルを合わせたり、関わる人全員がWINになる新しい概念をスケッターは実現できると信じています。高齢化の在り方を大きく変え、高齢化をポジティブに捉えていけるよう、未来に一石を投じられたらいいと思っています。
高木優一: 素晴らしい。応援しています。
今後のスケッターの躍進から目が話せませんね。
鈴木社長のご活躍も期待しています。
本日はどうもありがとうございました。