急に腰が痛くなることを「ぎっくり腰」といいます。正式な病名ではなく、俗称です。原因はいろいろですが、「もしもの時」に備えて対処の仕方を解説していきます。1〜2日の安静で軽快しない場合は、医療機関への受診をお勧めします。


1)無理をせず安静に

ピキッと痛くなったが、まだ動けるからとゴルフに行ったり、ディズニーランドに行ったり「せっかくだから・・」と無理をするのは禁物です。余計に悪くする危険が大きいのです。ぎっくり腰のなり始めは、可能な限り休みましょう。どうしても休めない人は、少なくとも「無理をしない」、それだけは守ってください。安静にして寝ていてもうずくように痛む場合は別ですが、ひどい痛みのぎっくり腰でも、まずは安静にして、自宅で様子を見ていると痛みはおさまります。焦らないことです。


2)くすり

痛み止めがあるなら飲んでみてください。頭痛薬でも良いでしょう。昔もらった痛み止めならあるけど古すぎ?・・1-2年以内なら通常は問題ないでしょう。それで楽になれば儲け物です。湿布があれば貼ってみると良いでしょう。冷湿布か温湿布か?・・それは30年前の分類の名残で、今はほとんど全てが痛み止めの湿布です。(第2回の記事参照)

3)コルセット

もしも家にあるならば、ぜひ装着してみましょう。強めに締めると、楽になることが多いです。最近は市販のものがたくさん発売されていますが、背部に支柱が入ったものをお勧めします。(医療機関を受診すれば保険適応となり、安価に入手できますが)



4)温めるか、冷やすか?

通常のぎっくり腰では、レントゲンやMRI検査をしたとしても異常が出ることは稀です。急に痛くなったのは、筋肉が部分断裂を起こした・炎症を起こしたと(勝手に)仮定して、「冷やした方が良い」と記載がある書物やインターネット情報が多いのですが、それは誤りかもしれません。部分断裂を起こせばMRIで異常が見られるはずですし、単に筋けいれん(つった状態)を起こしたのかもしれません。私は特段に冷やす必要もないし、そのままでいいかと考えています。



5)お風呂に入っていい?

大前提として、体温が37度や38度以上あるときには、炎症性の疾患が疑われますので、お風呂には入らない方がよいでしょう。それ以外では、ぎっくり腰でお風呂に入ってはいけないという理由はありません。お風呂に入って体を温めることで痛みが緩和される場合もあります。しかし、着替えるのにかなりの苦痛を伴うような激しい腰痛がある場合には、無理して入浴しないことをお勧めします。


6)マッサージ

早めになんとかしたくて、マッサージに頼る方も多いようです。ところがその結果は、意外にも悪くなることの方が多いようです。マッサージの仕方が悪かったのではなく、急性期にはマッサージを受けない方が良いと考えています。マッサージを受けてかえって悪化したとクリニックを受診される方が後をたちません。


7)救急車を呼ぶ適応は?

腰痛がひどく自分で動けないと、夜間や休日でも救急車を呼んで病院に来院する患者さんがいます。しかし、救急車出動の適応は、命に関わる緊急性の高い患者の搬送です。そうでないことが明白な場合には、適応外で税金の無駄遣いですから、救急隊や医療スタッフは必然的に冷たい対応になると心得てください(やむを得ません)。ぎっくり腰で動けない場合に、医療機関を受診したいのならば、家族に送ってもらうかタクシーを呼ぶなど救急車以外の移動手段を考えるべきです。




監修

アレックス脊椎クリニック  院長

吉原 潔(よしはら  きよし)


PROFILE

日本医科大学卒業 医学博士。

卒業後は日本医科大学の付属病院および関連病院で研修・勤務する。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもあり、社会人リーグやプロスポーツ選手の治療に当たってきた。その後、帝京大学溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。脊椎内視鏡手術のパイオニアだが、スポーツ医学との接点が多く、フィットネストレーナーの公認ライセンスも所持(NESTA:全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)。筋力トレーニングおよび体重管理にも造詣が深い。


ホームページ

アレックス脊椎クリニック  https://ar-ex.jp/spine

黒河内病院  https://kurokouchi.or.jp/index.html

腰博士 https://koshihakase.com

M+ POWER https://m-pluspower.com


著書

◆脊柱管狭窄症 腰のスーパードクターが伝授する 最新最強自力克服大全(わかさ出版)

◆脊柱管狭窄症 腰の名医20人が教える最高の治し方大全(文響社)

◆ひざ痛・変形性ひざ関節症(文響社)

◆腰の痛い人が読む本(エイ出版社)

◆腰痛を自力で治す本(ベースボールマガジン社)

ほか

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