
お坊さんになり、甚行寺のご住職になるまでの経緯を教えてください
実はお寺の生まれではないのです。在家(一般家庭)の出身なんです。
母の菩提寺(永福寺)が子供会を開催していて、春、夏、冬にお泊り会があり毎回参加していました。
小学生の頃は参加者として、朝夕のお勤めがある以外は遊んですごしていました。
中学生以上になるとボランティアスタッフとして、運営に携わるようになり、
大学生になると子供会を任せてもらうようになりました。
大学時代は学校も行かずにバンド活動に熱中していて、お金もないし、お腹もすいたけど、家に帰るのもシャクだなーと思いお寺に入り浸っていました。
教育学部だったこともあり、お寺の一画を使って近所の中学生向けに塾をやらせてくれました。
月謝はバイト代にしていいよって言われたからっていうのもあるんですけどね(笑)
そんなこんなで週に4,5日お寺にいるようになり、ある時師匠となる住職から「お坊さんやらない?」と軽く言われました。
1週間ほど考えた末、皿洗い中の母に「お坊さんやんない?って言われたんだよね」と伝えたところ、振り返り、「いいじゃない!お世話になっているんだから、恩返ししなさい」と大賛成でした。
師匠にも「お坊さんやります」と伝えたら、嬉しそうに笑ってくれたのを覚えています。
その後は1年半ほど住み込みで僧侶の資格をとりました。
勤めていたお寺の次代の住職は師匠の娘婿の方に決まっていたので、私はFA(フリーエージェント)扱いになりました。
6年たったころに甚行寺の先代住職から、声をかけていただき、後を継ぐべく養子となりました。
ちなみに、先代住職の娘さんと結婚したというわけではなく、シンプルに養子となり、妻も一般家庭の出身なんです。

京急線神奈川駅すぐの静かな住宅街にあります
課題に感じていいることはありますか?
お葬式の簡素化が気になっています。
時代背景もあるのでしょうが、直葬や一日葬などいろいろな形のお葬式が増えていますよね。
ですが、ちゃんとお通夜、お葬式をお勤めしましょうということです。
家族しか集まらないですから1日でよいですという風に言われることをもありますが、
家族葬や小規模なお葬式がダメということではなく、どんな規模でも
きちんと二日間お勤めしましょうとお話しています。
仏教の一番大切な教えの諸行無常という言葉があります。
お経はお通夜、お葬式それぞれのお経がありますし、その時間の経過に沿ってお勤めすることが重要です。
誕生日で考えていただくと分かりやすいと思うのですが、生まれたての赤ちゃんに1歳のお誕生日おめでとうとは言わないですよね。1年無事に過ごしてこれたからおめでとう!なんです。同じように通夜・葬儀・法事もその時々に則したお勤めが大切です。
そもそもはこれまでの仏教界、お寺が手抜きをしていた反動だと思っています。
何をしなくても仏事やお墓など、人が勝手に集まってくれていた時代に胡坐をかいていたんです。
偉いのは坊さんではなく、お寺を支えてくれるお檀家さんがありがたいと坊さん側が感謝しないといけなかった。
どうあるべきかということを伝えていかないといけないと思います。
人生最後の大切なお別れの時間であり、
お通夜とお葬式ではお経の内容もちがいます。
時間をかけて、大切な人とのお別れをしてあげる、祭壇はシンプルで構わないですし、お金がないならないなりにすればよいのです。
お別れ自体は悲しいけど、そこに悔いは残さないようにと思っています。
悲しみは消してあげることはできないですけど、悲しみを増幅させるようなことにはならないように
手伝ってあげるのが坊さんの役目だと思います。

本堂が2階にあるためエレベーターも設置されています(写真左)
大切にしている活動や今後やっていきたいことはありますか?
甚行寺の住職になるにあたり、一つ先代へお願いしたことがあります。
「子供会」をやらせてほしいということです。
小学校の6年間、師匠の寺で春夏冬のお泊り会に参加し、朝夕のお勤めでベーシックなお経は覚えていました。
元をたどるとこの子供会がきっかけでお坊さんにならせてもらえました。
こちらでは夏休み1回しかできないのですが、25年ほど続けています。
子供会のOBOGが結婚したり、成人式の後に飲みに行こう!と誘ってくれたりするのはとても嬉しいですね。
もう何年かすると、子供会参加者のお子さんが子供会に参加してくれそうです。
2世代にわたって参加してもらう、それが目標の一つですね。
ほかには、本堂を舞台にして演劇をしたり、子供会に参加してくれている子が音大生なのでコンサートをしたりしています。
ダンス作品の撮影をしたこともあるんですよ。
【アートにエールを!出展作品】"六人の花魁" by Latin Beauty®︎ - YouTube
動画の冒頭に出てくる男性、実は私なんです!
お寺をお葬式や法事以外でも使ってもらえたらと思っています。
お寺にご縁のなかった方にも来ていただけるイベントもやっていきたいですね。
インタビュー後記
突然訪問させていただき、インタビューをお願いしたにもかかわらず、快くお受けいただきました。
ご住職になられるまでのお話をはじめ、どのお話も大変興味深く、インタビューをさせていただきながらこちらが勉強させていただく時間となりました。記事には載せられなかったお話もたくさんあり、気さくにお話してくださるため、インタビュー中にも関わらず、我が家の墓じまいの相談をしてまったほどです。
フランス公使館跡など、歴史的にも貴重なお寺です。お近くにいらした際はぜひお立ち寄りください。
お問い合わせ
真宗高田派 真色山清浄之院 甚行寺
神奈川県横浜市神奈川区青木町3-10
TEL:045-441-2673
*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。