外面のいい少年は、負け方を知っていた
栗原朋也さんは、自分の子ども時代をこう表現した。
「外面がいい子でしたね」
先生に気に入られる言動ができる。勉強もそれなりにできる。運動もそれなりにできる。
表では優等生。裏では少しやんちゃ。
言い方は悪いが、なかなか器用な子どもだった。
夢中になったのは野球だった。父親が少年野球の監督をしていたこともあり、半ば強制的に始めたという。
小学校ではキャプテンを務め、市の選抜にも選ばれた。いわゆる“できる子”だった。
ただ、その器用さは、ある日突然、通用しなくなる。
小学校のマラソン大会。
1年生から5年生まで、栗原さんはずっと1位だった。ところが6年生になると、周りの成長が追いつき、追い越してきた。
結果、1位は取れなかった。
悔しさをごまかすために、途中で腹痛のふりをした。
本調子じゃなかったという逃げ道を、自分で作った。
「心底悔しかったですね」
この経験が、後の栗原さんの根っこに残っている。
今、あの時の自分に声をかけるなら。
「コツコツやった方がいいんじゃない」
器用だからこそ、やらない。
できると思っているから、積み重ねない。
でも、周りは成長している。努力している。
負けている場合じゃない。
その後、中学では野球で伸び悩んだ。小学校のスターから、中心選手ではない存在へ。
けれど高校では、地道なトレーニングで再び力を伸ばし、地元では知られる選手になった。
「公立校でもやれるんだって見せたかった」
器用な人間が、努力の価値を知る。
栗原さんの人生は、そこから少しずつ形を変えていく。

名 前:栗原 朋也
出 身:千葉県
在 住:東京都葛飾区金町
家 族:妻、子ども3人
仕 事:株式会社TFN取締役/経営管理部責任者
担当領域:経理・財務・人事・総務・法務など
弁護士志望から税理士志望へ。人生は予定通りにいかない
小学生の頃、担任の先生が千葉大学出身だった。
その話を聞くうちに、栗原さんは自然と「千葉大学に行く」「法学を学ぶ」「弁護士になる」というレールを思い描くようになった。
しかも理由がいい。
「めちゃくちゃ稼げるって聞いて」
正直である。非常にいい。
高校受験までは思い描いた通りに進んだ。しかし大学受験で、そのレールは外れる。
受かったのは明治大学。しかも法学部ではなく経営学部だった。
目標が一度、消えた。
大学生活はサークルとアルバイト。どこかのらりくらりと過ごしていた。
そんな時、地元・木更津の塾で出会った講師が税理士を目指していた。
話を聞いてみると、またもや夢のある言葉が出てきた。
「平均年収2000万円って書いてあって」
再び正直である。非常にいい。
そこから簿記や税法の勉強を始める。
今の栗原さんを形作る「経理」「財務」「経営管理」の道は、ここから始まった。
大学卒業後、最初に選んだ仕事は塾だった。
理由は明確だ。午前中に勉強時間を確保できるから。
通常の会社なら、朝から晩まで働くことになる。残業もある。
でも塾なら午前中が空く。そこで資格の勉強をする。
このあたりが栗原さんらしい。
情熱だけではない。ちゃんと現実的にルートを設計する。
その後、税理士事務所へ。さらに事業会社へ。
そして現在は、EC・物販を中心とする会社で取締役、経営管理部の責任者を務めている。
経理、財務、人事、総務、法務。
聞けば聞くほど、担当範囲が広い。
要するに、会社の裏側をほぼ全部見ている人である。営業で前に出るタイプではない。
むしろ大学時代、新聞契約のアルバイトを1日で辞めたことがある。
何十軒も回って、1件も契約が取れなかった。
「もう絶対こういう仕事は向いてないと思いました」
自分の得意不得意を早めに知ることは、人生においてかなり大きい。
栗原さんは、前で売る人ではなく、後ろで会社を支える人になった。

「自分が源泉」――信頼は、責任から生まれる
栗原さんが大事にしている言葉がある。
「自分が源泉」
自分の周りで起きたことには、何かしら自分に原因がある。
他人のせいにすることはできる。見ないふりもできる。
でも、それでは先がない。
「全ての行動は自分が責任を持ってやることだと思っています。じゃないと成長できないし、人からも信用されない」
この言葉は、栗原さんという人をよく表している。
少し怖く見られることもあるという。
人事や管理部門の立場上、社内では締切や手続き、ルールを伝える側になる。
ニコニコ近づいていったら、逆に社員が身構える。
たしかに、管理部門あるあるである。
でも、その怖さの奥にあるのは、責任感だ。
栗原さんにとっての善人とは何か。
その答えも、とても栗原さんらしい。
「信頼できる人ですね」
性格がいいとか、優しいとか、そういうことだけではない。
言動に嘘がない。
言っていることと、やっていることが違わない。
約束を守る。
責任感がある。
それが栗原さんにとっての善人だ。
いい人そうに見える人より、信頼できる人。
耳あたりのいい言葉より、行動が一致している人。
これは、経営管理という仕事をしてきた人の言葉でもある。
数字も、組織も、人も、表面だけでは見えない。
だからこそ栗原さんは、嘘のない行動を信じる。

葛飾金町で、子育てをしながら思うこと
現在、栗原さんは葛飾区金町に暮らしている。
もともとは千葉県出身。結婚を機に、妻が長く住んでいた葛飾へ移った。
金町の好きなところを聞くと、こう答えた。
「下町っぽいところですね」
23区でありながら、都会すぎない。
水元公園のような大きな公園があり、河川敷では少年野球をしている。
おじいちゃん、おばあちゃんも多い。
都会と田舎のちょうど間のような空気がある。
子育て環境についても、かなり満足しているという。
「子育てに関して言うなら、要望はないですね」
23区の恩恵もあり、葛飾区は子育てしやすい。だから人も増えている。
ただ、一つだけ強い要望がある。
「JR金町駅の出口を増やせ」
ここだけ急に熱量が上がった。
人が増えているのに、出口が少ない。混む。とにかく混む。
善人承継の記事で、まさか駅の出口問題にここまで踏み込むとは思わなかった。
しかし生活者の声とは、こういうところに宿る。
地域に対して何かできることがあるとすれば、会社で扱う子ども向けの商品を、幼稚園や保育園などに還元していくこと。
ただし、それには品質や仕様をきちんと整える必要がある。
「自信を持って出せるものにしないと」
ここでも栗原さんは、勢いだけで動かない。
ちゃんと責任を持てる状態にしてから、外へ出す。
それがこの人のやり方なのだ。

45歳までに見たい景色
これから挑戦したいことを聞くと、栗原さんは迷わず言った。
「上場です」
バックオフィスの人間として、上場という経験には大きな価値がある。
年間に上場できる会社は限られている。
そこに到達するということは、会社として一つの壁を超えることでもある。
栗原さんは、自分の人生をこう見ている。
野球では甲子園に行ったわけではない。
新卒で大企業に入り、ナンバーワン営業になったわけでもない。
何か一流のステージに立った感覚が、まだない。
「それなりにできた人、みたいな感じなんですよ」
だからこそ、上場という壁を越えたい。
そこには、きっと越えた人にしか見えない景色がある。
苦しい。大変。簡単ではない。それでも、人間的な成長は大きいはずだと栗原さんは言う。
目標は45歳。
そして、5年後の自分に声をかけるなら。
「順調?」
短い。でも重い。
そこには、今の自分が未来の自分に対して投げる、静かな確認がある。
新社会人に伝えたいことも、栗原さんらしい。
「後悔しない選択をしてください」
新卒は人生で一度しかない。
中途採用のチャンスは何度もあるが、新卒という入口は一度きり。
だからこそ、プレッシャーではなく、自分が好きなこと、自分が納得できることで選んでほしい。
栗原さん自身、最初の就職を「塾ならどこでもいい」と選んだ部分があった。
だからこそ、こだわることの大切さを知っている。
人生は予定通りにはいかない。
でも、責任を持って選び直すことはできる。

採用について
栗原さんの会社では、現在、通年採用にも取り組んでいる。
特に求めているのは、ECショップの運営に関わる人材、商品ページ制作に関わるデザイナー・制作メンバー、商品企画、中国とのやり取りができる人材、SNSやインフルエンサー施策などのWebマーケティングに強い人材など。
栗原さんは、ECにおける商品ページを「命」と表現する。
広告でページまで来てもらうことはできる。
でも、買うかどうかはその先。
最後のワンクリックを押してもらえるかどうかは、ページの魅力にかかっている。
だからこそ、そこを作る人材を大切にしたい。
会社を支える裏側の人間が、会社の未来を見ている。
栗原さんの仕事は、分かりやすく目立つものではない。
でも、間違いなく会社の背骨なんだ。
インタビュー後記
栗原朋也さんは、たぶん本人が思っているよりずっと面白い人だ。
いや、失礼。
本人はかなり真面目に話している。
でも、その真面目さの隙間から、時々とんでもなく人間くさい言葉が出てくる。
弁護士を目指した理由が「稼げると聞いたから」。
税理士に興味を持った理由も「平均年収2000万円」。
結婚式の資金が足りなくて、親に借りるのは恥ずかしいから車を売る。
そして葛飾への要望は「JR金町駅の出口を増やせ」。
最高ですけど。
でも、その奥にあるものは一貫している。
自分の人生を、人のせいにしない。
できなかったことも、負けたことも、選び間違えたことも、ちゃんと自分の中に引き受ける。
「自分が源泉」
この言葉を言うのは簡単。でも、実際にそれで生きるのはなかなか難しい。
栗原さんは、積極的に前へ出る人ではない。
スポットライトを浴びて、拍手を集めるタイプでもない。
でも、ほとんどの人が知っている。会社にはこういう人が必要なんだってこと。
家庭にも、地域にも、社会にも、こういう人が絶対必要なんだってこと。
約束を守る。
嘘をつかない。
責任を引き受ける。
当たり前のようで、実は一番難しいことを、ちゃんとやろうとしている人。
栗原朋也さんは、善人だ。
しかも、ちょっと怖くて、ちょっと面白くて、かなり信頼できる善人である。
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*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。
山元 直樹
2026/05/25(月)