まちの仕事人インタビュー
可視化で対話をひらく仕事
理学療法士/ビジュアルコミュニケーションデザイナー 豊原 亮子 (とよはら りょうこ) さん インタビュー

理学療法士として約20年、医療と生活の最前線に立ち続けながら、現在はビジュアルコミュニケーションデザイナーとしても活動している豊原亮子さん。病院や在宅医療、障害福祉の現場で人の声に耳を傾けてきた経験を土台に、「書いて、見せて、対話する」コミュニケーションを実践している。コロナ禍をきっかけに本格化したグラフィックレコーディングは、講演や会議、ワークショップの場で人の理解と納得を深める手法として評価され、医療分野を中心に活動の幅を広げている。現在は理学療法士とコミュニケーションデザインの二つの軸を行き来しながら、人と人をつなぐ場づくりに取り組んでいる。

今の仕事を始めたきっかけを教えてください

理学療法士として患者さんと向き合う中で、言葉だけでは伝わらない場面に何度も出会いました。体調や将来への不安を抱えている方ほど、説明をしても頭に入らず、話が抜け落ちてしまうことが多かったのです。そこで、紙に書きながら一緒に整理し、今困っていることやこれからの目標を「見える形」にしていくと、少しずつ表情が和らぎ、落ち着いて話ができるようになることに気づきました。その体験が、書いて伝えることの力を実感した原点です。その後、オンラインセミナーが増えたコロナ禍で、聞いた内容を自分なりに書き起こし、可視化してまとめるようになったことが、現在の仕事へと自然につながっていきました。


活動が広がった経緯を教えてください

もともとは子育てをきっかけに働き方を見直し、理学療法士として正社員からパート勤務へと切り替えていました。子どもが成長し、少しずつ時間に余白が生まれる中で、これまで続けてきた「書いて整理する」取り組みが、仕事として求められるようになっていきました。最初は副業のような形でしたが、講師や医療関係者から声をかけていただく機会が増え、依頼が重なっていったことで、活動を正式に仕事として位置づけるようになりました。特別なきっかけがあったというよりも、現場で必要とされることを続けてきた結果、今の形に落ち着いたという感覚に近いです。

仕事の特徴を教えてください

仕事の特徴は、「対話を生む可視化」を重視している点にあります。講演や会議の内容をそのまままとめるのではなく、その場の空気や話し手の熱量、参加者の反応を感じ取りながら、描くことを心がけています。あえて余白を残すことで、見る人が考え、話したくなるきっかけをつくることも大切にしています。医療現場で培った多職種間のバランス感覚や、場の流れを読む力が、グラフィックレコーディングやファシリテーションにも生かされています。

相手の立場に立って考え、安心して話せる空気をつくる

お仕事で大切にしていることを教えてください

一番大切にしているのは、その場にいる人たちが安心して話せる空気をつくることです。どれだけきれいな図やイラストを描いても、そこに人の気持ちが置き去りになってしまっては意味がありません。話し手が何を大切にしているのか、聞き手がどこで引っかかっているのかを感じ取りながら、対話が前に進むような整理を心がけています。医療の現場で培った「相手の立場に立って考える姿勢」が、今の仕事の根底にあります。

この仕事のどんなところが好きですか?

話が終わってしまえば忘れられてしまうかもしれない出来事や気づきを、形に残せるところが、この仕事の好きな点です。「あのとき、こんな話をしましたよね」と振り返ることで、学びや感動が次につながっていきます。また、グラフィックを囲んで自然と会話が生まれ、参加者同士が言葉を交わす瞬間を見ると、可視化が人と人をつないでいることを実感します。伝わった、理解してもらえたと喜んでいただけた時に、大きなやりがいを感じています。



今後やりたいこと等、展望を教えてください

今後は、医療分野に限らず、地域やまちづくりの場にも関わっていきたいと考えています。多世代や立場の異なる人たちが集まる場では、意見が対立しやすい一方で、丁寧な対話があれば新しい気づきが生まれます。板橋を拠点に、地域の人たちが安心して話せる場をつくり、その記録を可視化することで、次につながる関係性を育てていきたいです。仕事と暮らしが自然につながる活動を続けていきたいと考えています。

大切にしているスタンスを教えてください

無理に完成形を目指さず、そのときにできる最善を積み重ねていくことだと思います。最初からグラフィックレコーディングを仕事にしようと決めていたわけではなく、目の前の人にとって必要なことを続けてきた結果、今の形にたどり着きました。うまくいかないことや迷いも含めて受け入れながら、一歩ずつ前に進むことが、自分なりの成功につながっていると感じています。

インタビュー後記

豊原さんのお話を聞いていると、「可視化」という言葉の奥にある、人へのまなざしの温かさが伝わってきました。理学療法士として人の生活に寄り添ってきた経験が、そのまま現在の仕事につながっていることが印象的です。描かれた一枚の中には、情報だけでなく、その場に流れていた空気や感情までもが宿っているように感じました。対話を大切にしながら、地域や医療の未来を静かに支えていく姿勢に、これからの広がりを強く期待しています。

お問い合わせ

豊原 亮子

理学療法士/ビジュアルコミュニケーションデザイナー

電話:090-9630-3465 

メール:ryokotoyohara@gmail.com 

公式サイト:https://ryokotoyohara.my.canva.site/

日本医療デザインセンター:https://mdc-japan.org/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。