
兵庫県出身
salon anela(サロンアネラ)代表
人は、生まれ育った環境や、人生で出会うさまざまな出来事によって、知らず知らずのうちに自分自身の価値を決めてしまうことがある。
「自分はこういう人間だから」
「こうあるべきだから」
そんな思い込みが、いつの間にか自分の可能性を狭めてしまうこともあるのではないだろうか。
今回お話を伺っためぐみさんは、幼少期の複雑な家庭環境、結婚、子育て、そして大切な人との別れを経験しながら、自分自身の生き方を何度も問い直してきた女性だ。
美容業界で実績を重ね、現在は人の内面に寄り添う「魂のエステ」を実践している。
その歩みの根底にあるのは、苦しみを乗り越えた強さだけではない。
自分自身を受け入れ、目の前の人を大切にする、しなやかな優しさだった。
名前に込められた願いと、幼少期の記憶
「めぐみ」という名前には、母親の願いが込められている。
柔らかく、何にでも恵まれるように。
めぐみさんは、名前は親から子どもへの最初の贈り物であり、その人の人生にも影響を与えるものだと考えている。
しかし、その名前に込められた温かな願いとは対照的に、幼少期の家庭環境は決して穏やかなものではなかった。
長距離トラックの運転手だった父親は、仕事で家を空けることが多く、ギャンブルに深くのめり込んでいた。自宅にはパチンコ台が並び、子どもたちもその世界に巻き込まれていたという。
複雑な家族関係の中で育っためぐみさんにとって、父親との関係は、その後の人生にも大きな影響を与えるものとなった。
特に心に残っているのが、幼い頃の誕生日の出来事だ。
ケーキを買って帰ると約束した父親は、パチンコを優先して帰ってこなかった。そればかりか、約束を待ち続けていためぐみさんに怒りを向けたという。
子どもにとって、誕生日は自分が生まれてきたことを祝ってもらえる特別な日。
その日に経験した悲しみは、やがて「自分は大切にされなくても仕方がない」という思い込みにつながっていった。
大人になってからも誕生日が近づくと体調を崩すことがあり、幼い頃の経験が心と身体に深く刻まれていたことを感じたという。
父親が亡くなった後も、相続に関する手続きや、それまで知らなかった家族の存在など、新たな現実と向き合うことになった。
それでも今、めぐみさんは過去の経験をただ悲しい記憶として抱えるのではなく、自分の内面を理解するための大切な手がかりとして見つめ直している。
一つの事故が開いた、美容への扉
めぐみさんが美容の世界に興味を持つようになったきっかけは、高校時代の交通事故だった。
事故によって顔に大きなけがを負い、医師からスキンケアについて助言を受けたことが、美容に目を向ける最初の一歩となった。
その後、化粧品売場で出会ったのが、某化粧品メーカー美容スタッフのAさん。
華やかな美容の世界、そこで働く女性の姿。
めぐみさんは、その世界観に強く心を惹かれた。
Aさんの後押しもあり、憧れていたブランドで働く機会を得る。
後にAさんが独立してサロンを開いた際にも、そのご縁は続いた。
人生を変える出会いは、必ずしも大きな出来事の中にあるわけではない。
何気なく訪れた売場で出会った一人の女性が、その後の人生に長く影響を与える存在になる。
めぐみさんのお話から、人とのご縁が持つ不思議な力を感じた。
「良い妻、良い母」であろうとした日々
結婚もまた、めぐみさんの人生を大きく変えた出来事だった。
かつての交際相手が交通事故を起こした際、その不誠実な対応を目の当たりにし、めぐみさんは、自分を大切にしてくれる人と生きることの意味を考えるようになった。
そんな時に出会ったのが、現在の夫だった。
しかし、結婚後の生活は、思い描いていたものとは違っていた。
夫の両親からは世間体を理由に外で働くことを止められ、専業主婦として家事と育児をこなす日々。
年子の子どもたちを育てながら、良い妻であり、良い母であろうと懸命に努力した。
けれど、頑張れば頑張るほど、心は追い詰められていった。
本当はどうしたいのか。
何が好きで、何をしている時に幸せを感じるのか。
いつの間にか、自分自身の気持ちは後回しになっていた。
精神的に苦しい状態が続き、医療機関にも通った。
周囲の期待に応えようとするあまり、自分自身を見失っていた時期だった。
そんなめぐみさんの人生を大きく動かす出来事が起こる。
大切な人の死が教えてくれた、「自分の人生を生きる」ということ
同じように年子の子どもを育てていたママ友が、自ら命を絶った。
あまりにも突然の出来事だった。
同じように子育てに悩み、苦しんでいた身近な存在。
その死に直面しためぐみさんは、「自分もそうなっていたかもしれない」と感じたという。
そして、自分の人生を根本から見つめ直すことになる。
《自分は一度死んだのだから、これからの人生はおまけ》
それは、人生を諦める言葉ではなかった。
むしろ、もう一度、自分の人生を自分の手に取り戻そうとする決意だったのだと思う。
「お母さんを辞めます」
そう宣言しためぐみさん。
もちろん、子どもたちの母親であることを放棄するという意味ではない。
誰かが思い描く理想の母親や妻であることだけに、自分の人生を縛りつけるのをやめる。
一人の人間として、自分の好きなことを選び、自分の人生を生きる。
その決意が、新しい人生の扉を開いていった。
全国1位の実績、そして手放す勇気
自分自身の人生を生きると決めためぐみさんは、美容の仕事に再び情熱を注ぎ始める。
補正下着の代理店業を再開し、エステサロンの仕事にも携わるようになった。
しかし、複数の仕事に取り組む姿勢が周囲との摩擦を生み、兼業を制限するルールが設けられることになる。
それでも、めぐみさんは自らの力で結果を示した。
コロナ禍の緊急事態宣言中、対面営業が難しい環境の中で電話営業に取り組み、全国売上1位を達成したのだ。
そして、その実績を残したタイミングで、業界を離れる決断をした。
結果を出したからこそ、その場所にとどまり続けるという選択もあったはずだ。
けれど、めぐみさんが大切にしたのは、肩書きや実績にしがみつくことではなく、自分が納得できる生き方だった。
美容の世界では、自身の肌の変化が周囲の関心を集め、多くの人をサロンへ紹介するようになったことが、独立への道につながった。
サロンオーナーの勧めで専門的な学びを深め、やがて自身のエステサロン「サロンアネラ」を開業した。
人とのご縁に導かれながら、自分の可能性を一つずつ形にしてきた。
サロンオープン直後、家族ぐるみで仲良くされていた友人のご主人が病気で亡くなった。
闘病中に『めぐちゃん、好きな事やりなよ。』と言われた言葉が、今でも深く心に残っている。
この言葉はめぐみさんの、サロンアネラの在り方を支える大きな軸になっている。
めぐみさん自身も、お客様も、かかわるすべての方が
「誰かの期待に応えるためだけでなく、自分の好きな事をしっかり自分の意思で選んで人生自由に楽しんでほしい」そのような想いがより強くなった。
その歩みの中で、美容に対する考え方も少しずつ変化していった。

肌を整えることから、心を整えることへ
現在、めぐみさんが大切にしているのは、「魂のエステ」という考え方だ。
かつては肌に触れ、美しさを引き出すことが仕事の中心だった。
しかし、さまざまな経験とコーチングの学びを重ねるうちに、人が本当に求めているものは、目に見える美しさだけではないと感じるようになった。
誰にも言えなかった気持ち。
自分でも気づいていなかった思い込み。
本当はやってみたかったこと。
そんな心の奥にある声を、丁寧な対話によって引き出していく。
今では、直接肌に触れる施術を最小限にし、会話を通して一人ひとりが自分自身と向き合う時間を大切にしている。
そして、目の前に現れるお客様は、自分自身を映し出す鏡でもあるという。
誰かの悩みに耳を傾けることは、かつて同じように悩んでいた自分自身と向き合うことにもつながる。
過去に経験した悲しみや苦しみがあるからこそ、理解できる気持ちがある。
めぐみさんの「魂のエステ」は、美容という枠を超え、人が自分自身を大切にするための時間になっているのだろう。
木のように、自然体で人を支える
これからの活動について尋ねると、めぐみさんの言葉からは、肩書きにとらわれない自由な生き方が伝わってきた。
エステティシャン、経営者、コーチ。
どれもめぐみさんを表す言葉ではあるけれど、その一つだけに自分を当てはめようとはしない。
目の前の人が必要としているものを、その時々で届けられる存在でありたい。
その在り方は、まるで一本の木のようだ。
木陰を求める人がいれば、そっと日陰をつくる。
支えが必要な人がいれば、そこに立ち続ける。
無理に誰かを変えようとするのではなく、自分らしく在ることで、周囲の人が安心して自分の人生を歩めるように。
現在は紹介を中心としたサロン運営を続けながら、自身の経験をきっかけに、暮らしや身体を取り巻く環境にも関心を広げている。
さらに、新たにデトックスサロンを立ち上げる方を支援するなど、自らが主役になることよりも、誰かの夢を応援する役割へと活動を広げている。
事業を大きくすることだけが成功ではない。
自分の周りにいる人が幸せになり、その幸せがまた別の誰かへとつながっていく。
めぐみさんが目指しているのは、そんな自然な幸せの循環なのだと感じた。
自分を大切にすることから、すべては始まる
幼少期に抱いた「自分は大切にされなくても仕方がない」という思い。
良い妻、良い母であろうとするあまり、自分を見失った日々。
大切な人の死をきっかけに、人生をもう一度生き直そうと決めた瞬間。
そのすべてが、今のめぐみさんにつながっている。
もし、あの時の苦しみがなかったら。
もし、あの時の出会いがなかったら。
今とは違う人生を歩んでいたかもしれない。
けれど、どんな経験も、自分を知るきっかけに変えていくことはできる。
人はいつからでも、自分の人生を選び直すことができるのだ。
「人生はおまけ」
そう語るめぐみさんの言葉は、今を自分らしく生きることの大切さを、私たちに静かに問いかけている。
インタビュー後記
今回、めぐみさんのお話を伺い、最も心に残ったのは「人生はおまけ」という言葉でした。
その歩みを一つひとつ伺ううちに、この言葉には、限りある人生だからこそ、自分自身の心に正直に生きるという強い覚悟が込められているのだと感じました。
私たちは、妻や母、社会人としてさまざまな役割を担っています。けれど、その前に一人ひとりがかけがえのない存在であり、自分の人生の主人公なのだと思います。
過去は変えられなくても、その受け止め方やこれからの生き方は変えられる。めぐみさんの人生は、そんな大切なことを教えてくれました。
そして、自らの道を切り開いてきためぐみさんが、今は誰かの夢を応援することに喜びを見いだしている姿も、とても印象的でした。
自分を大切にすることが、やがて周囲の人の幸せへとつながっていく。その在り方は、私自身が大切にしている想いとも重なります。
「めぐみ」という名前に込められたお母様の願い。その名のとおり、今度はめぐみさん自身が、周囲の人々にたくさんの恵みを届けているように感じました。
これからも自然体で人に寄り添い、温かな光を届けていかれることでしょう。
めぐみさんがこれから紡いでいく新たな物語を、心から楽しみにしています。
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2026/10/24(土)