善人承継 リレーインタビュー
好きにしたらええで―女性として生まれた僕が、“父になる”まで―
株式会社リアル 代表取締役 坂口 友亮 (さかぐち ゆうすけ) さん インタビュー

違和感とともに生きた幼少期

「なんか、自分だけ違う気がするんですよね」

坂口友亮さんの原点は、幼い頃に感じた違和感だった。

父と自分の身体の違いに気づき、「そのうち同じになる」と思っていたが、その日は来なかった。

誰かに相談することもなく、その感覚を抱えたまま日常を過ごす。

水泳や剣道、ボーイスカウトに打ち込み、休み時間は最後まで外で遊ぶ。

周囲から見れば、元気で活発な子ども。

だがその内側では、言葉にできないズレがずっと残っていた。


名  前:坂口 友亮(さかぐち ゆうすけ)

年  齢:35歳

出身地:兵庫県神戸市

現住所:大阪府池田市

家族構成:妻・娘(1歳)

職  業:株式会社リアル  代表取締役

結果を出すほどズレていく人生

中学・高校と剣道に打ち込み、県内トップクラスの強豪校へ。

キャプテンも務め、実績も積み上げていく。

だが、その評価は坂口さんにとって苦しさでもあった。

「勝てば勝つほど、“女子剣道の坂口”って言われるんですよ」

結果を出すほど、自分が望まない形で認識されていく。

努力と評価が、自分を肯定するものではなくなっていった。

やがて心は限界を迎え、高校2年の冬に中退。

親との衝突もあり、家庭も揺れた。

「あそこが一番の分岐点でしたね」

続ける道ではなく、やめる道を選んだこと。

それが、後の人生を大きく変えることになる。

「25歳までに変える」と決めた理由

進学先で出会ったのは、同じ違和感を持つ人たちだった。

「性別は変えられる」

その事実を知った瞬間、これまで閉ざされていた選択肢が一気に広がる。

そして決めた。


「25歳までに性別を変える」


理由は現実的だった。

「5年あればお金も貯まるやろ」と考えたからだ。

そのために選んだのが介護職。

収入を優先し、最短距離で目標に近づく道を取った。

短大卒で初年度の年収380万円。

仕事は楽しかったが、それ以上に“目的のための手段”だった。


家族との衝突、そして覚悟

23歳でカミングアウト。

家族の反応は簡単に受け入れられるものではなかった。

母親は自殺未遂を起こし、父親とは長く会話が途絶えた。

「自分でも、なんでこうなってるか分からなかったですからね」

それでも坂口さんは立ち止まらなかった。

会社にも自ら説明し、働きながら治療を進める。

24歳で手術・治療を終え、戸籍上も男性へ。


「やるって決めただけなんで」


大きな決断を、淡々とやり切った。

成功と挫折、そして再起

性別を変え、新しい人生が始まる――

しかし、その先に待っていたのは別の試練だった。

共同で立ち上げた事業が崩壊し、

1300万円の借金を抱えることになる。

仲間も離れた。

「正直、こっからの方がきつかったですね」

だが、それでもやめなかった。

ゼロから立て直し、現在はコンサルティング事業を展開。

対人支援・教育系事業者に対し、ビジネス設計や集客を支援している。

年商は4000万〜8000万円規模。

一人で積み上げてきた結果だ。

池田という“ちょうどいい場所”

現在暮らすのは、大阪府池田市。

都会と田舎の中間に位置し、

自然と利便性のバランスが取れた街だ。

「選択肢が多い場所がいいんですよ」

どこでも生きていける人間が、あえて選んだ環境。

それが池田だった。

そして今、ここで奥さんと子育てをしている。

これまでの人生では、想像していなかった日常だ。

だからこそ、ふとした瞬間に気づくことがある。

近所の人が子どもに自然に声をかけてくれること。

散歩中の人が、当たり前のように気にかけてくれること。

「昔ながらの、“みんなで子どもを見る感じ”があるんですよ」

かつては意識することもなかった“当たり前”が、

今ははっきりと価値として見える。

「これは残していってほしいなって」

強い主張ではない。

だが、この街で暮らし、この立場になったからこそ出てきた言葉だ。


「好きにしたらええで」の本当の意味

坂口さんは言う。


「好きにしたらええで」


過去の自分にも、新社会人にも向けた言葉だ。

一見すると自由を肯定する言葉に聞こえる。

だが、その本質は違う。

好きにするということは、

その選択の責任をすべて自分で背負うということだ。

家族との衝突も、理解されない孤独も、事業の失敗も、1300万円の借金も。

誰のせいにもせず、逃げずに引き受ける。

だからこそ、この言葉には重みがある。


「好きに生きろ」ではない。

「好きに生きたなら、最後までやり切れ」


坂口友亮という人間は、それを体現している。


インタビュー後記

最初は、特別な人生だと思っていた。

性別のこと、家族との衝突、借金、再起。どれも簡単に語れるものではない。

だが話を聞くうちに印象は変わった。

この人は特別なのではない。

ただ――逃げなかっただけだ。

違和感からも、現実からも、結果からも。そして、その選択をすべて引き受けてきた。

だからこそ言葉に重みがあり、だからこそ今の姿が“普通”に見える。

池田の街で奥さんと子どもと過ごす姿は、どこにでもいる父親そのものだ。

だがその当たり前は、自分で選び、掴み取ってきたものだ。


このプロジェクトは、そうした

“まだ光の当たらない人生”を繋いでいく。


次はどんな人が現れるのか。

どんな覚悟を持った人が、坂口さんのバトンを受け取るのか。

物語は、またここから続いていく。

お問い合わせ

株式会社リアル

大阪府池田市荘園1-9-26

Instagram:@real_legacy.sy

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。

ご紹介者さま: アジック株式会社 秋葉 勇人 さん