“好き”が見つからなかった少年が、“作る喜び”だけは知っていた
神奈川県平塚市。都市と田舎が絶妙に混ざり合うこの街に、小さな行列ができる店がある。
ベルギーワッフル専門店「COLORFLE」。
その店主が、吉川翔里さんだ。
彼の原点は、少し意外なところにある。
子供の頃から、何か一つに熱狂するタイプではなかった。ただ一つだけ、確かなものがあった。
「作ることが好きだった」
レゴや絵。決められたものではなく、自分の中から湧き出たものを形にする。それが楽しくて仕方なかった。勉強もできた。サッカーではキャプテン。いわゆる“優等生”だったが、その努力の理由は少し違う。
「親を喜ばせたいからやっていた」
誰かのために頑張る。その感覚は、この頃から彼の中に根付いていた。

名前:吉川翔里(よしかわ しょうり)
職業:ベルギーワッフル専門店「COLORFLE」/雑貨店「moi」経営
所在地:神奈川県平塚市
経歴:ベンチャー企業→カナダ留学→オンライン英会話nativecamp講師→ワッフル店開業
信念:「迷ったらGO!」
“勝てない”と知った日、人生は動き出した
大学卒業後、ベンチャー企業へ。広告の新規営業として働き始める。しかし、そこで突きつけられた現実。
「営業って、数字でしか評価されない世界なんですよ」
どれだけ話が上手くても、結果が出なければ意味がない。そして彼は気づく。
――この世界で、自分は勝てない。
普通なら、ここで折れるか、しがみつくか。だが彼は、“外”へ目を向けた。きっかけは一冊の本。当時の社長に教えてもらった、彼にとってのバイブル
『狼たちへの伝言』。
その一冊が、彼の人生を動かした。キャリアを手放し、カナダへ語学留学。英語力はほぼゼロ。周囲は昇進していく中で、自分だけがリセット。それでも彼は決めていた。
「何かを得て帰らなきゃ意味がない」
その覚悟が、1年後の自分を変えた。オンライン英会話の講師ができる程の英語力を身につけて。

人生を変えたのは、“たまたま受かったバイト”
カナダで出会ったのが、ベルギーワッフル。それは単なるスイーツではなかった。彼にとって、
“作りたいもの”だった。
帰国後、日本で同じ味を探す。だが、どこにもなかった。ならば――自分で作るしかない。とはいえ、最初からワッフル一本ではない。母の一言で始めた雑貨店「moi」。その家賃を補うために始めたワッフルが、いつの間にか主役になっていた。
「気づいたら、こうなってました」
計算ではない。戦略でもない。ただ、“好き”が膨らんだ結果だった。

moi

COLORFLE
「自分の中ではまだ完成していない」から、やめられない
彼は、こう言い切る。
「まだ、海外で食べた味を100%再現できてないんですよ」
本場のレシピは手に入れている。味も近い。それでも――食感が違う。この“あと一歩”が、彼を突き動かしている。
営業が終わった後も、試作を繰り返す日々。答えは、まだ見つかっていない。それでも彼は笑う。
「早く作りたいんです」
改善の余地があるからこそ、続けられる。その姿勢は、もはや職人というより“探求者”だ。
「仕事を、趣味にしたい」
その言葉通り、彼の人生は“好き”でできている。

平塚という街で、小さな店が輝くために
吉川さんは平塚生まれ、平塚育ち。この街の魅力を問うと、少し照れながらこう答えた。
「やりやすいところですかね」
だがその裏には、確かな想いがある。農家の無人販売、マルシェ、小さな個人店。この街には、個性がある。だからこそ願う。
「小さいお店に優しい街になってほしい」
物価上昇、原材料高騰。個人店は常にギリギリの中で戦っている。それでも彼は、この街で続ける。そして、繋がる。人と店と、地域と。

人生は“暇つぶし”。だからこそ、本気で遊べ
彼は言う。
「人生って、暇つぶしなんじゃないかなって」
5年後の自分に問いたい。
「人生って何だった?って」
きっと目的なんてない。だからこそ、好きなことをやる。その方が、ずっと自由だ。彼は毎年、誕生日に遺言書を書くという。そこに書かれるものが、“本当に大切なもの”だから。そして、自分の信念はシンプルだ。
「迷ったらGO」
不完全でもいい。失敗して半泣きしてもいい。むしろ、不完全だから進む。その選択の積み重ねが、今の彼を作っている。

インタビュー後記
彼のワッフルは、“理屈じゃない”。なぜ美味しいのか、説明できない。でも、また食べたくなる。
――その理由を、今回のインタビューで少しだけ理解した気がした。
実はこの取材、決してスムーズではなかった。何度も会話は中断された。理由はシンプルだ。お客さんが、途切れない。ショーケースの中は、ほぼ完売。それでも人が来る。
「インスタで見て気になってて」
「前から通るたびに気になってたんです」
そんな声に、彼は一人ひとり丁寧に応える。そして、自分のワッフルのこだわりを――本当に楽しそうに語るのだ。その姿は、どこか無邪気で、まるで“好きなことを語る子供”のようだった。ああ、この人はまだ“途中”なんだなと思った。
日々発見、挑戦の繰り返し。だから、楽しい。だから、伝えたくなる。そしてその熱が、ちゃんと人に届いている。
完璧じゃない。彼はまだ追求しているのだ。それでも人が集まり、また来たいと思わせる。それはきっと、“味”だけじゃない。
「迷ったらGO」
その言葉通りに進み続けてきた人生が、そのままワッフルに焼き上がっているからだろう。
さて――この情熱を、次に受け取る善人に会いに行こうか。
お問い合わせ
◇ベルギーワッフル専門店「COLORFLE」
神奈川県平塚市中原2-22-17
https://www.colorfle-waffles.com/
◇平塚の小さな雑貨店「moi」
神奈川県平塚市徳延190番地
https://www.zakkaten-moi.com/
営業時間:水木金土 11:00-17:00
*ご連絡はインスタから、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。