まちの仕事人インタビュー
【Chiicup™️】現役看護師の社長が語る、女性用携帯トイレの新提案
合同会社BOUKEN 代表 髙野 明子 (たかの めいこ) さん インタビュー


会社名:合同会社BOUKEN

設立  :2023年3月

代表  :髙野  明子


看護師として医療現場に従事しながら、災害時の女性用カップ型トイレの開発・販売を行い、2足のわらじを履いている髙野さん。「なんとかなる、まずアクションを起こそう!」という気持ちで2023年3月に事業を起こされました。「防災」と「健康」の頭文字を取り、「BOUKEN」と名付けた社名には、自分の興味関心のあるところに突き進んでいこうという冒険の意味も込められているそうです。髙野さんの熱い思いを感じ取ってみてください!

起業に至った経緯について

私が起業を考え始めたのは、高校生の時に新潟中越地震を経験したのがきっかけです。

その時、被災地にボランティアに行って、災害医療チームの看護師の声掛けで被災者の方々が笑顔になる姿を目の当たりにしました。

その光景に感動して、私も看護師になろうと決心しました。


そして、看護師として働きながら、防災士の資格を取得する中で、災害時の女性特有のトイレ問題に注目するようになりました。

トイレは電気、上下水道のどれか1つでも止まってしまうと使えなくなります。


避難所でのトイレはプライバシーが守られないことが大きな問題です。

たとえば、女性は衣服を大きく脱がなければならないため、男性と同じ仮設トイレでは心理的な抵抗があります。

「臭い、怖い、暗い、汚い」という4Kが避難所トイレで多くの女性が感じる不安要素になっています。

また、月経中だとナプキンの交換や処理に困ることが多いです。

さらに、妊婦さんや高齢者は頻尿であることが多く、トイレまでの距離や段差が負担になりやすいです。

その結果、「トイレを我慢しよう」と考え、脱水症状や感染症につながるケースも少なくありません。


特に東日本大震災の際には、避難所でトイレの不便さから体調を崩し、命を落とした方もいらっしゃったことから、妊婦さんや月経中の女性、高齢の方にとって、衛生的で安心して使えるトイレがないことが、命に関わる大きな問題だと痛感しました。

これまでの防災計画は男性主導で、女性特有のニーズが考慮されていないことも分かり、「だったら自分で作るしかない」と思い立ちました。

それがカップ型トイレ「Chiicup™️」誕生のきっかけです。


「Chiicup™️」の特徴について

既存の持ち運びトイレは使い捨てのものが多く、頻尿になりやすい妊婦さんや高齢者、子どもには不向きでした。

また、受け口が小さく、使いづらいという声もあり、東日本大震災の時、失敗してズボンを汚し、着替えがなくシャワーも出ず、辛い思いをしたという話を聞きました。


そこで、医療職の女性としての視点で、女性が再利用できるトイレを作ることにしました。

思いついたのは、スターバックスコーヒーでホットコーヒーを飲んでいた時でした。

熱いので紙コップに巻かれていたスリーブの形を見て閃きました。

そんな経緯もあって、商品に小さく☆のマークを印字しており、大事な購入者さんたちを護ってねという私の思いでもあります。


カップ型トイレ「Chiicup™️」の特徴は主に3つです。

1つ目は、重さ。

重さはたった47グラムと軽量ですが、受け口が広く簡単に装着できるので、子どもから高齢者まで安心して使って頂けること。

2つ目は、耐久性。

素材は軽量ですが、500mlの液体にまで耐えることができ、1回の排尿(約200ml)を十分にカバーできること。

3つ目は、使い方。

レジ袋と凝固剤を使うことで、座った状態でも立ったままでも、衛生的に何度も繰り返し使用ができてリーズナブルなこと。


「Chiicup™️」は携帯性にも優れ、繰り返し使えるトイレとして特許を取得しています。

たとえライフラインがストップしても、レジ袋はなくならないだろうというところに目をつけました。


災害時以外でも介護や看護の場でも便利です。

高齢者の方にとっては、トイレまでの移動が難しい時にベッドサイドで使うことができますし、嘔吐の際の補助具としても使うことができます。


現在の課題について

課題としては、まず商品をもっと多くの人に知ってもらうこと、そして販売ルートを確保することです。

現在はネット販売が中心ですが、大手小売店やホームセンター、行政機関との連携を進めたいと考えています。


警察署や区の防災課に置かせていただいたケースはありますが、まだまだこれからです。

地震や災害が起きると、防災に一気に注目が集まりますが、一度収まると関心が薄くなってしまうので、重要性を伝える努力をし続ける必要があると思います。



今後のビジョンについて

私のビジョンは、「Chiicup™️」を日本中、そして世界中に広めることです。

難民キャンプや紛争地域では、アフリカのようにトイレが不足していることが感染症や暴力の引き金になっています。

こうした問題を解決するために、持続可能なトイレを提供したいと思っています。


アフリカでは、レジ袋にトイレをして、外に捨てているような現状もあります。

「Chiicup™️」と併せて、土に還る素材を使ったビニール袋の普及にも努め、女性や子ども、高齢者の命と尊厳を守るだけでなく、地球にも優しい持続可能な取り組みを続けていきたいです。


読者へのメッセージ

災害はいつどこで起こるかわかりません。

だからこそ、日頃から防災意識を持つことが大切です。

「Chiicup™️」は備えの一つとして、皆さんの安心を支えるものです。

家族や友人と一緒に防災グッズを見直し、いざという時に備えてください。

「命を守るための選択肢を増やす」それが私たちの使命です。


トイレの介護、医療費負担軽減という観点で介護施設に置いていただいたり、ホームセンターやコンビニなど誰でもすぐに手にとれるところに置いていただけると嬉しいです。




編集後記

災害時のトイレ問題については考えたこともなかったので、命に関わるという話に驚かされました。トイレを我慢した経験を思い出してみると、確かにとても辛く苦しいです。漏らしてしまった時には、人間としての尊厳を失ったような悲しみもあります。食事は我慢できても、トイレは長く我慢できない。女性にとってセンシティブなトイレの問題は、身体の構造上も、我慢すると男性以上に病気のリスクが高まります。髙野さんが被災地に行って肌で感じたこと、医療に従事する中で知ったことがしっかりと組み合わされて、プロダクトに落とし込まれているところが凄いと感じました。もちろん使わずに済むことが理想ですが、備えあれば憂いなし。防災セットの中に、トイレだけに、”漏れなく”入れておきたいと思います。

お問い合わせ

合同会社BOUKEN

〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-11-12 

日本橋水野ビル7F

TEL : 03-6692-0147

E-mail:info@bouken.tokyo.jp

HP:https://www.bouken.biz/

*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。