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一粒万倍(いちりゅうまんばい)とは、

一粒の籾が万倍にも実る稲穂になる

という意味。

何事を始めるにも良い日ともされ、

仕事始め、開店、出店、お金を出すことに

吉であるとされる。

一粒のヒントやアイデアが

あなたの運を万倍にする。

ビジネス評論家石塚 毅の

ビジネス系開運コラム。

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コロナショックで業績が悪化した企業の中で

必ず、一定の割合で出てくるのが


「本業に回帰しよう」

「事業の選択と集中をしよう」


という意見や考えです。


日本人ってこの「本業回帰」が好きなのかも

しれませんね。

「一所懸命」的な価値観が影響している

のかもしれません。


しかし私の体験からいうと「本業回帰」で

V字回復をした会社って記憶にありません。

ダメになった会社の印象の方が強いです。


ビジネスって過去の歴史で何が起こり

どのようになったのか、をみんな忘れます。


少しプレイバックしましょう。

1990年代後半、日本企業は銀行主導の下

「本業回帰」と称する得意分野への特化に

よる利益体質強化を選択しました。


銀行からすると貸したお金が返ってこない

と困るわけで、その会社が確実に返済できる

為にはリスクがより大きい周辺事業より

本業一本で真面目に利益を上げて

借金を返してください、という趣旨でした。


当時ほぼすべてのメディアや経営者は

利益率向上の為には本業回帰は

正しい選択である、と信じきっていました。


さて、結果はどうなったか?

うまくいきませんでした。

日本はバブル崩壊後の長い経済不況が

続くことになります。


またかつてのテレビ製造の分野における

ソニーとシャープの戦略の違いがわかり

やすいかもしれません。

独自の工場を持たないソニーと

自社工場を通じて独自の技術展開を

したシャープとの比較です。


当時シャープは液晶テレビに特化した本業

回帰型ビジネスを、一方のソニーはゲームや

エンタメなど多角的な事業展開をしていき

ました。

結果、ソニーは業績を回復しシャープは台湾の

鴻海に買収されました。


目まぐるしいスピードの技術革新と消費者

動向の変化、加えて1年で3割も下がって

しまう商品価格を目の前にしてシャープの

テレビ事業は限界を迎えてしまったのです。


これは余談ですが、人も企業も

「得意なところでまちがえる」

傾向があります。

当時のシャープは高性能なテレビの需要に

応えられるのはウチだけだ!という自負があり

他社を寄せつけない強さを売りとしていました。

しかしだんだんと薄型テレビの技術は成熟期に

入りお客の目にはメーカーの違いが

分かりにくくなってしまったのです。


ビジネスリスクをいかに低くするかを考える

ときに1つの事業やビジネスモデルに執着

していると

それがなんらかのランダムショックで機能しな

くなったときには、会社の存続そのものが

危うくなってしまいます。


だからリスクを低減できる関連事業・周辺事業

をあらゆるリソースを投入して事業開発する

ことにはとても意味があるのです。


例えば、銀行と証券を一体化して補完しあう

のはいまは当たり前ですが、20年前なら信じら

れなかった戦略ですし、

建設業とホテルの組み合わせることで

支払いサイトが長い手形払いの建設業と

現金ビジネスのホテルで財務戦略上のメリット

を作る、などもいまはフツーです。


複数の事業が機能する会社は変化の激しい

時代には強いのです。

言い換えると関連比率が少ない「一本足打法」

の会社は現状どんなに業績が良くてもリスク

であるのです。

いつでも無傷でテレビから撤退できる会社

いつでも無傷で牛丼から撤退できる会社

いつでも無傷で採用事業から撤退できる会社

は本当に強い。


本業回帰ではなく、

本業をプラットフォームとして考え、

周辺の儲けネタをどんどん事業化していくこと

が、いままさに求められる、と思います。



石塚 毅(いしづか たけし)

1970年生まれ。ビジネス評論家。担当実績7,000社、相談実績15,000人に

裏付けされた企業経営・ビジネスモデル・社風・人材の情報通で博覧強記。

話がおもしろい!と評判。

ご質問・ご相談などはこちらまで。

ishizuka@keiei-c.jp