
株式会社夢動(ドリームーヴ) 代表取締役
NPO法人ポジティブ・フロム・ジャパン 理事長
出身:岡山県
設立:2013年7月7日
場所:中央区湊
事業:不動産賃貸売買仲介及び管理など
今回伺ったのは、八丁堀で不動産仲介などを営む大深さんです。大学時代から夢を持つことの素晴らしさに魅了され、「らしく」生きることを体現してきました。事業だけでなく、NPO活動にも従事されるパワーの根源に迫ります。
大深さんの経歴について
高校を卒業して、地元岡山から東京に上京してきました。初めて入った新宿のクラブで、高校時代からHIP HOPやR&Bのレコードを収集していたことからDJとして音楽イベントに参加させてもらえることになりました。機材に触れたこともなかったので、全く上手く出来ませんでしたが、それが楽しくて翌週には機材一式を購入、それからDJ JOEとして活動を開始しました。そこでダンサーやラッパー、シンガーなど、それぞれのジャンルで“夢”を持って活動している仲間たちのエネルギーに触れて、「夢を持ち挑戦することは素晴らしいな」「“らしさ”って凄く大事だな」と自然と自身の価値観がつくられていきました。
若き日の大深さん
実家が創業100年を超える大工をしていたことから大学では建築を学び、卒業後はスターツグループに入社。現場監督志望で最終選考まで進みましたが落選。この会社のことが既に好きになっていたため、人事に理由を尋ねたところ「君は営業向きだ」と言われました。であればと、営業職として一から再選考を受け、晴れて入社することになりました。
正直、営業にはかなりの抵抗がありました。理系出身で構造力学や物理など難しい計算式と日々向き合ってきた自分にとって、営業は「誰にでもできる」という偏見がありました。ですが、やってみると全く違いました。営業は「どれだけ人の心に届くか」が問われる仕事で、「物売りではなく、人売りであり、その方のお困りごとを解決できるかどうかが大事」ということが分かりました。今となっては営業をやっていて本当に良かったと思っています。
一方で、不動産仲介の現場では葛藤もありました。駆け出しの音楽仲間や芸人が他社でお断りにあったり、来店された方の中には自己破産歴がある方など「属性」や「数字」だけで企業のルールに従って杓子定規に弾かれたりするケースが多々ありました。ただ、実際に話を聞いてみるときちんとした考えや計画を持っている人も沢山いました。そんな方の力になりたいと思って、貸主に依頼人の想いを伝えるべく、想いを綴った直筆の手紙を書き、結果連帯保証人なし・保証会社なしで契約を結ばせていただいたことがあります。
今でもその姿勢は変わっていません。条件的には難しいお客様であっても、しっかりビジョンやポリシーを伺い、その想いを申込時に手紙に綴って渡すようにしています。当時は上司と何度も口論になりましたが、夢を追いかける人の気持ちがわかる自分だからこそ、そこに情熱を持って取り組めたのだと思っています。
そんな中で、自分の中に芽生えていた「夢を応援したい」という気持ちがどんどん強くなっていきました。会社員をしながら続けていた音楽イベントと社会貢献活動が副業にあたると注意を受けたことをきっかけに、退職を決意しました。
時同じくして、不動産仲介を行う以上、貸主の気持ちは貸主でないと分からないという考えから、当時29歳で妻と八丁堀(湊一丁目)にビルを購入しました。貸主と借主、互いの気持ちに寄り添えるのが自分の強みです。
退職して、独立することを決めましたが、すでに音楽仲間をはじめ様々なご縁が広がりご紹介の基盤が出来ていましたので、事業に対する不安はありませんでした。
そして、私と私の妻と音楽イベントの副代表を務めていた者の3名で株式会社夢動(ドリームーヴ)を創業しました。
「らしくあれ」は夢動の経営理念です
夢動の事業について
夢動では、「不動産」「クリエイティブ」「サービス」「ライフエンターテインメント」という4つの軸で事業を展開しています。どれも自分自身の経験や出会いの中から生まれたもので、“夢”や“らしさ”を大切にする姿勢がすべての根底にあります。
不動産事業(仲介・管理)
メインで手がけているのが、不動産仲介・管理の仕事です。これまで契約してきた最寄り駅の数は全国331駅、店舗・事務所の契約数は154件にのぼります。
完全紹介制で運営しており、借主の想いと貸主側の事情、その両方をしっかりと受け止めたうえで契約に導くことを大切にしています。ときには、他社にて履歴や属性で門前払いされてしまうような方の相談に乗ることもありますが、「この方に貸す理由」をしっかりと伝えれば、貸主も心を動かしてくれる。そんな交渉ができるのが、自分の仕事の面白さでもあります。
会社で管理している建物の一つ
一級建築士 宇津木氏デザイン
クリエイティブ事業(内装・リフォーム)
不動産の仕事を通じて、「この建物、もう少しアレンジすればもっと良くなるのに」と思うことがよくあります。そういった時に、改修やリフォームの提案をして、実際に施工の段取りまで伴走するのがこのクリエイティブ領域です。自分自身もビルオーナーという立場があるので、コスト感や収益性、デザインと機能のバランスを考えた“リアルな提案”ができるのが強みだと思っています。
もともとはマルチクリエイターである創業メンバーの一人が担っていた事業部で、夢動の全事業部のロゴを彼が制作しています。
サービス事業(美容整体サロン)
八丁堀と自由が丘の二拠点で美容整体サロン「Cuna」を運営しています。整体・アロマ・音叉・エネルギーヒーリング・小顔フェイシャル・足つぼなど、豊富な手技と感性を融合したオーダーメイドの施術が特徴です。ありがたいことに雑誌に取り上げられることもあり、口コミだけでお越しいただけている状態です。完全予約制のため、ご感心のある方はHPをご確認ください。
整えサロン「Cuna」HP:https://cuna-beauty.com/
ライフエンターテインメント事業
音楽を中心に様々なイベントを成功させてきました。これまで音楽イベントは全国7都市で150回以上開催し、累計25,000人以上の方に参加・来場いただいています。
その中でも音楽を超えた枠組みとして、「夢プロジェクト」は夢を語りたい人とそれを応援したい人が出会う場をつくりたいという想いから始まりました。形式はシンプルで、参加者(ドリーマー)が7分間で自分の夢を語り、コメンテーターがその場でアドバイスを返すというスタイル。プレゼンでもなく講演でもない、今まさに「夢の途中にいる人」の言葉に向き合う場です。
NPO法人の活動について
私は16歳から献血を行っており、これまで325回献血を行ってきました。若い頃から社会貢献活動には興味がありました。
大人になってからNPOの活動を始めることなったのは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病と闘う“マカさん”と出会ったことがきっかけでした。マカさんが書き綴ったポジティブメッセージの本『どうぞ!ALS患者からYOUへ』の内容にものすごく心を動かされました。
「夢は、この本を一人でも多くの人に届けること」そうマカさんが言った際に「じゃあ、その夢、僕が叶えます」と即答しました。
「売る」のではなく「届ける」にはどうしたらいいか、すごく悩みました。営業的に本を売り込むのは違う気がして、だったらチャリティイベントを開いて、その収益で本を購入して、学校や教育機関に“贈る”というスタイルにしてみようと考えました。
進行性の難病のため加速度的に活動をしていくという意味でNPO法人ポジティブ・フロム・ジャパンを設立し、様々なイベントを開催しながら、少しずつ寄贈先を広げていきました。これまでに2,534冊を1,983箇所に寄贈。講演活動も31回行い、全国に45名(法人含む)の会員が支えてくれています。
特に昨年度は、中央区内の全公立小中学校および「わくわく21」へ23冊を寄贈し、中央区の平林教育長に贈呈式を執り行っていただきました。こうした行政との連携ができたのも、活動を継続してきたからこそだと思います。
嬉しいことに、マカさんは“余命3年”と言われてから、なんと今24年目を迎えています。「この活動が自分の命を延ばしてくれてるのかも」と、本人が笑って話してくれた時は、胸が熱くなりました。
講演を通じて、子どもたちから感想文が届くのですが、「死にたいと思ってたけど、話を聞いて生きたいと思いました」という言葉をもらった時は、ほんとにやってきて良かったと思いました。100人全員に響かなくてもいい。1人でも何かが変わるきっかけになれば、それで十分だと思っています。
これからのビジョン
どんな事業にも共通してあるのは、「出会った人の“物心”を豊かにしたい」という想いです。
物質的な安心と、心の充足。その両方があることで、人は自分らしく生きていけると感じています。
イベント活動をしていた頃、仲間と一緒に「salud entertaiment(サルーエンターテイメント)」という名前で活動していました。
“salud”はスペイン語で「乾杯」を意味する言葉なのですが、そこに「覚めない夢に生きる特別な仲間たち(Special Association Live in Underground Dreams)」という意味合いを重ねて、私たちらしい想いを込めました。
今自社が所有している八丁堀のビルにも、活動当時の価値観や感覚を宿し、「salud.bld 八丁堀」という名前を付けました。
会社を設立して12年、貸主・借主・売主・買主、同業者、皆様からの信頼のお陰で多岐多様な経験を積むことができ、対応規模も一歩一歩着実に拡大してきました。
これからもその経験をフルに活かし出逢った方の”夢を動かす”お手伝いができる伴走者でありたいと考えています。
これまでの不動産の現場で私は沢山の想いに触れてきました。通常入居審査では、その人がどんな想いで生きているか、何を叶えようとしているかまでは見て頂けないことが多いです。それでも諦めず情熱を注ぎ、その現状を打破してきた自負はあります。
今の自社ビルのような夢を持った人たちが集う場所を、今後少しずつでも増やしていきたいと思っています。“夢を持ち続ける人”が安心して事業を営んだり、暮らしたりできる場所。まさに「あなたらしく、暮らせる場所を」。そんなビルを、これから一つずつ、形にしていきます。
「日々劇的に 日々に感謝」
インタビュー後記
インタビューを通して、大深さんの事業内容だけでなく、そこに秘められた想いを感じることが出来ました。音楽を通じて夢を追い続ける人たちと出会い、不動産仲介で夢を追い続ける人の苦労を知り、それらの経験をもとに事業を展開されているので、バラバラなようで全てが繋がっていることが分かります。何をするかではなく、なぜするか。自分らしさを突き詰めるとはそういうことなのかなと感じました。