
横山鉄工所を経営している横山文人さん。1960年に祖父が創業した工場を引き継ぎ、現在は三代目として現場を支えている。三鷹市で生まれ育ち、幼少期から父の背中を見ながら工場に親しみ、大学卒業後に正式に入社。ブラスバンドで培った音楽好きの一面や、地域サイトの立ち上げ経験を活かし、工場のホームページを自身で運営している。BtoBに加え、一般の施主から直接依頼を受けるBtoCの業務にも積極的に取り組み、鉄を作るだけでなく守る仕事にも注力している。工場を通じて人の暮らしを支え、安心と安全を届けることを信条に活動中。
今の仕事を始めたきっかけを教えてください
私の家は祖父の代から続く鉄工所で、私自身が三代目にあたります。幼い頃から父の働く姿を見て育ち、自然と「自分もここに入るのだろう」と感じていました。大学時代には音楽や地域活動に熱中しながらも、アルバイトとして工場の手伝いをしていたことが大きなきっかけになりました。社会に出て就職活動も行いましたが、最終的には父の背中に憧れを抱き、家業を継ぐことを選びました。気がつけば30年以上、この工場で鉄と向き合いながら暮らしを支える仕事を続けています。
会社設立までの経緯を教えてください
横山鉄工所は1960年頃に祖父が創業し、当初は旋盤加工を中心にした小さな工場でした。その後、父の代で建築鉄骨工事を請け負うようになり、ステンレスやアルミなど素材の幅も広がりました。私は三代目として入社し、これまでの技術や伝統を引き継ぎながら、新たにインターネットを通じた顧客との直接取引を始めました。工務店や建設会社の下請けだけでなく、個人の施主からも問い合わせを受けるようになり、BtoBとBtoCの両面で仕事を展開することで、現代のニーズに応える形へと会社を進化させてきました。

会社の特徴を教えてください
横山鉄工所は「鉄を作る」だけでなく「鉄を守る」ことを大切にしています。鉄骨階段や廊下など、古くなった建物の構造物を補修・延命することで、新しいものに取り替えるよりもコストを抑え、建物の寿命を延ばすことが可能です。BtoBでは建設業界の一端を担い、BtoCでは直接施主と向き合い、安心と納得を提供する。その二つを両立している点が大きな特徴です。また、ホームページやLINEでのお問い合わせに対応し、職人気質ながらも現代的なコミュニケーションを積極的に取り入れている点も他にはない強みだと感じています。
安全だけでなく安心を提供し、心の支えを作る

お仕事で大切にしていることを教えてください
私が大切にしているのは「安心と安全」です。安全は技術的な側面で事故や不具合を防ぐこと、安心は施主の心の不安を和らげることです。たとえば、補修工事の際には「あと何年使いたいのか」を必ず伺い、目的に応じた最適な方法を一緒に考えます。必要以上に費用をかけずに済む提案も行い、メリットとリスクを丁寧に説明しながら、施主と同じ目線で工事を進めています。工事前の打ち合わせに時間をかけ、信頼関係を築いたうえで施工することこそが、私にとって最も大切な姿勢です。
この仕事のどんなところが好きですか?
施主と直接やり取りをし、工事完了後に「ありがとう」と声をかけていただける瞬間が何よりの喜びです。BtoBでは感じにくいこの達成感こそが、私の大きなモチベーションになっています。工事が終わった現場を見て笑顔になっていただけると、「社会に役立っている」と実感できます。職人として汗を流すだけでなく、人とのつながりを感じられるのがこの仕事の魅力です。現場ごとにオーナーの想いや事情が異なるため、毎回新しい発見があり、自分自身の成長にもつながっています。

今後やりたいこと等、展望を教えてください
全国展開のような大きな拡大は考えていません。むしろ、顔の見える範囲でお客様と膝を突き合わせながら、地に足のついた仕事を続けていきたいと思っています。時代の変化に合わせて求められるものは変わります。防犯カメラやセキュリティ対策など、新しい安心を届けるニーズも出てきています。今後も技術や道具をアップデートしながら、施主が安心して暮らせる環境を整えるためにアンテナを張り続けたいと考えています。規模よりも質を大切にし、信頼される工場であり続けることが私の展望です。
成功哲学を教えてください
私の考える成功は「安全だけでなく安心を提供すること」です。安全は施工者として当然の責務ですが、安心は人と人との関係性から生まれるものです。相手の気持ちに寄り添い、不安を共有し、納得いただける形で工事を進めることが成功への道だと信じています。規模の拡大ではなく、一人ひとりの施主に誠実に向き合うこと。そこで得られる信頼こそが、会社を長く続ける力になると思っています。鉄を扱う仕事でありながら、心の支えを作ることが本当の成功につながると感じています。
インタビュー後記
横山さんのお話を伺いながら、鉄工所という存在が地域の暮らしにどれほど深く関わっているのかを実感しました。鉄を作るだけでなく、守ることで建物を延命し、人々の安心を支える。まさに「縁の下の力持ち」という言葉がぴったりでした。父から受け継いだ技術を守りながらも、インターネットを活用して新しい顧客層にアプローチする柔軟さは、横山さんならではの工夫だと感じます。真摯に人と向き合う姿勢が、工場の音に温かみを与えているように思えました。
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