まちの仕事人インタビュー
技術職から会計士へ。キャッシュフローを最大化する「鷹の目」会計士
武井公認会計士事務所 代表公認会計士・税理士 武井 浩之 (たけい ひろゆき) さん インタビュー

武井公認会計士事務所代表、有限責任大有監査法人代表社員。公認会計士・税理士・環境計量士。群馬県渋川市出身。東北大学工学部卒業。大学卒業後、資源調査会社に就職。金や地下資源の探索・調査部門で、通産省主導の資源開発プロジェクトなどを経験。しかし、長期間に及ぶ泊り込み業務や山を登る肉体労働がたたり、30過ぎで体を壊してしまう。その後、長く働くことができる仕事をしたいと公認会計士の勉強を始め、4年目に合格。合格後は、不動産コンサル会社、会計事務所での実務経験を経て独立。現在は、中小企業の税務顧問を中心に据えながら、上場企業・大会社等の会計監査業務もてがける。大のウルトラマンセブン好きでもある。

資源調査会社から会計士へとキャリアチェンジを果たした武井さん。会計士を目指したきっかけはなんだったのでしょうか。

最初の会社で体を壊してしまったことが一番の理由です。大学卒業後に資源調査会社に就職したのですが、資源調査での仕事は現地調査がメインで、山を登ったり長時間歩き回ったりとかなり肉体労働なんです。そんな生活を続けていたせいか、ある日、体を壊してしまった。そのとき、「この仕事を一生続けられるか」と考え、「長く続けていくのは難しい」という結論に至ったんです。そこから次のキャリアを探し始めました。キャリアチェンジをしようと決めてからというものいろいろな人の話を聞いくようにしていたんです。そうやって動いていたところ、先輩から会計士はどうかという話がありました。当時の私は会計士という資格の存在すら知らなかったのですが、調べてみるとIPOの支援をしたりする仕事であると知ったんです。小さな会社を育てて上場させていくという過程が、モノ作りにも通じる面がありそうだと感じ、理系で育った私にピッタリだと感じました。そんなこともあり、会計士を目指してみようと思い至ったんです。

会計士という存在すら知らなかった人が、会計士試験に挑戦とは本当のゼロスタートであったと思います。合格まではかなり大変だったのではないでしょうか。

合格まで4年かかりましたし、大変でしたね。会計士の試験では簿記という、数字を扱う科目があり、しかも四則演算だけで答えが出る。これなら理系出身の自分であれば楽勝だろうと最初はなめていました。加えて、仕事を続けながら勉強したり、仕事を辞めた後もアルバイトをしながら勉強といった具合で甘く見ていたのが悪かったのでしょう。そういう慢心もあり、1年目、2年目は全く歯が立ちませんでした。3年目になってようやく、「このままでは合格できない」と理解し、親に頼み込んでお金を借り、起きている間はすべて勉強に費やした結果、4年目でようやっと合格することができました。

会計士試験に合格後、どのようなキャリアを歩んだのか教えてください。

実は会計士試験合格後、しばらくプータローをしていました。というのも、合格の時期がちょうどバブル崩壊の時期と重なったんです。そのため、どの大手監査法人にも雇ってもらえず、予備校の採点の裏方をしたりして食いつないでいました。定職につけたのは合格後しばらくしてからで、会計士協会から不動産コンサル会社を紹介されたのがきっかけです。話は逸れますが、実は会計士と名乗るためには、試験に合格するだけではだめなんです。当時は、3次試験に合格してはじめて会計士を名乗れました。そのため、多くの試験合格者は会計事務所で働きながら、3次試験合格のために勉強をします。ただ、私が就職した不動産コンサル会社は忙しすぎて3次試験の勉強ができない環境だった。会計士にはなりたいが勉強の時間はない。だからといってまたプータローに戻るわけにはいかない。こういうジレンマを抱えているとき、ある会計事務所と一緒に仕事をする機会がありました。そこで会計事務所の仕事のお手伝いをさせてもらっていたのですが、そこでの働きを認められ所長から「うちに来ないか」という話をいただきました。コンサル会社の社長には非常にお世話になったため、とても迷いましたが、結局3次試験合格のため、転職することを選びました。その事務所に入所してからは、法人税、個人の所得税を中心に5年ほど実務経験を積ませていただき、独立をしたという経緯になります。



独立までに紆余曲折あったのですね。独立してからも苦労したことはありますか。

独立当初は特に大変でした。お客さんが友達の会社1社だけという状態で独立していますし、営業もしたことがないので、そもそもどうやって集客したらいいのかがわからない。当時は結婚もしていましたし、子供もいたので生活も苦しく本当に大変でした。会計監査の仕事を副業的にしていたのでそこでぎりぎり生活していたという感じです。お客さんが集まり始めたきっかけは、税理士会の支部に顔を出し始めてから。そこで支部の会計を手伝っていたところ、記帳代行会社の税務申告のお手伝いをする機会に巡り合ったんです。そこで私が税務申告のお手伝いをしていたクライアントが、保険の営業マンの方々。その営業マンの方々から、彼らのお客さんである法人のご紹介をいただけるようになり、現在まで続いているという具合となります。

独立後もご苦労をされてきたわけですね。仕事で一番大切にしていることはなんでしょうか。

一番は信用です。信用の作り方にもいろいろあると思いますが、私の場合はクライアントと腹を割って話をして初めて信頼関係が築けると思っています。いただくご相談の中のダントツトップは、「節税」に関するご相談なのですが、私は目先の節税ではなく、より高い視座に立ってアドバイスをするように心がけています。その中でクライアントと意見が対立してしまうことも多くあるのですが、そういう時こそ俯瞰した視点でのご提案をしていますね。会社にとって最も重要なのはキャッシュを残すことです。当然クライアントもキャッシュを残すために節税を考えているのですが、節税にこだわるあまり、無駄にお金を使ったり、いらない車を買うような経営者が非常に多い。確かに税金は抑えられるかもしれませんが、これでは節税しようと考えたもともとの目的と相反していると思います。こういう話をするとクライアントと意見の対立が起きることもしばしばあるのですが、そういう時はひざ詰めでは話をするようにしていますし、私はそういう時間を大切にしています。もちろん払う必要のない税金を支払うことはありません。ただ、私が心がけているのは、クライアントのキャッシュフローの最大化です。節税だけではなく総合的な見地からいかにキャッシュを会社に残すのか。こういうクライアントと意見が対立するような話でも、しっかり向き合ってクライアントと腹を割って話をすることで、信頼関係は築かれていくのだと思っています。私はこういうスタイルを大切にして仕事をしています。

最後に読者にひとことお願いします。

会計に興味を持ってほしいなと思っています。私もそうでしたが、会計と言われてもピンとこない人の方が多いと思います。でも会計がわかると国の予算の仕組みとか、決算書を読めるようになって、経済の仕組みがわかったりするんです。そういう大きな世界の一端を理解できるようになると、今まで知ることのできなかった世界にリーチできることにもなると思います。一人一人がそういう意識を持つこと自体が社会への参加になると思いますし、一人でもそういう人が増えれば世の中もっと良くなるのではないかと思います。世の中を理解するきっかけとして、会計を学ぶ。こういう考え方を一緒にもてる仲間が増えればいいなと思っています。


インタビュー後記

会計士や税理士というと堅い印象を受ける方も多いと思います。しかし、武井さんは非常に気さくな方で、インタビュー中も終始和やかな雰囲気で楽しく取材をさせていただくことができました。しかし、仕事の話になると穏やかな雰囲気はそのままに、クライアントに対して真摯に向き合うというご自身の軸を感じることができました。印象的だったのは節税だけに目が向いている経営者が多いという話。キャッシュを残すための節税なのに、いつの間にか節税のために余計なキャッシュを使ってしまっている。私の周りの経営者にも心当たりのある方がいるように思えます。会社にキャッシュを残すという、真の目的を達成したいという経営者のみなさん。一度武井さんにご相談されてみてはいかがでしょうか。

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*お電話相談の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。