まちの仕事人インタビュー
起業家として社会に、僧侶として一人ひとりに向き合う
Waterhuman株式会社 代表 / 功徳林寺 僧侶 新谷 覚亮 (しんたに かくりょう) さん インタビュー

生年月日:1995年1月24日

趣味特技:WEBデザイン、旅やヒッチハイク(一人で生きているのではなく、誰かの親切に支えられていると実感できるところが好き)

座右の銘は「水は方円の器に随う」


興味を惹かれた土地、原体験はイスラエル

起業家兼僧侶は大変珍しいと思いますが、どちらが先だったのですか?

はい、私は起業してスタートアップを経営する傍ら、功徳林寺という台東区谷中のお寺で僧侶としても活動しています。順番としては、2020年に起業して3年経った頃に僧侶の修行を開始しました。

僧侶を目指したきっかけは、お寺の一人娘であった妻と結婚する際に、義父にあたる住職から「僧侶にならないか」と言われたことです。子どもの頃は、自分が僧侶になる未来など想像したこともありませんでしたが、今思えば目に見えないお導きがあったようにも感じています。

現在に至るまでに、どんな経緯があったのですか?

大学を卒業した2017年、私は今ほどAIが発達していない頃にAIベンチャー企業に新卒で入社しました。そこで最先端のテクノロジーに触れた私は、次第に「もっと広い世界を見てみたい」という思いを抱くようになりました。

その際に強く惹かれたのがイスラエルという国でした。当時のイスラエルは建国以来最も治安が安定していたと言われており、IT産業が目覚ましい発展を遂げていました。米国のシリコンバレー、中国の深圳に次ぐ世界の技術拠点として注目を集めており、「必ずこの国へ行こう」と心に決めた数日後に、幸運なことにイスラエル現地で起業した方とご縁をいただき、トントン拍子で転職しました。

イスラエルで過ごした1年半は、私の人生においてかけがえのない財産になりました。イスラエルには、ビジネスの中心地であるテルアビブと、宗教の中心地であるエルサレムという二つの大きな都市があります。最先端のIT技術と歴史ある宗教の間を行き来する毎日は、本当に刺激的でその後の私の人生に大きな影響を与えています。

しかし、そんな日々は新型コロナウイルスの流行によって突然終わりを告げました。「これはしばらくイスラエルに行けなくなる」と直感した私は、日本に戻り起業を決意。2020年3月に『Waterhuman株式会社(ウォーターヒューマン)』を設立いたしました。現在は第7期目を迎えております。

どのような思いで起業したのでしょうか?

イスラエルは起業家の数や女性の社会進出という点で世界でも一歩抜きん出ていますが、私が何より感銘を受けたのは、シニア世代の方々の「国を支えてきたのは自分たちだ」という圧倒的な気概でした。建国から幾多の困難を乗り越えてきた方々は、生涯現役という心意気で今も国を支えています。その燃え上がるような熱意を目の当たりにし、「これを日本でも再現できないか」と考えたことが、私の起業の原点となっています。日本は世界で最も進んだ超高齢社会の課題先進国ですので、日本が良くなるためにはシニア世代の活躍が必須です。そこでシニア世代の方々がもっと有機的に社会と繋がり、積極的に価値を創出できる仕組みを作りたいと考え、起業当初はシニア向けのビジネスマッチングアプリやデジタル教育事業などを試みましたが、なかなかうまくいきませんでした。


Waterhumanという会社名には、どんな意味があるのですか?

この会社名には、私の価値判断の基準が込められています。

中国の故事に「水は方円の器に随う」という言葉があります。水は器の形によって四角や丸に姿を変えますが、人もまた環境によってその在り方が変わるという意味です。私がシニア世代に関わる課題に取り組む中で、シニア世代が「ただ支えてもらうだけの存在」のように語られる場面にも遭遇します。けれど、それはあくまで社会の仕組みの問題であり、その方々ご自身に非があるわけではないと考えています。

そこで、人を水に見立てる先の言葉を引用し、環境を整えることでシニア世代の方々がもっと活躍できる社会をつくりたいということで『Waterhuman / ウォーターヒューマン』という名前に決めました。余談ですが、私は学生時代に水上スキーというスポーツに打ち込み、日本代表に選出されたこともあるのですが、単純に「水」が好きという、ごくシンプルな意味もあります。[n]


現在はどのような事業を行っているのでしょうか?

シニア向けサービスを模索する中で、人生の最終段階である「死」という壁が、本人やご家族にとってどれほど大きな負担や不安となっているかを痛感しました。そしてそのタイミングで、僧侶としての道を歩み始めることを決めました。イスラエルの経験を経て宗教というものにも関心を持っていましたし、シニアの活躍を目指す事業と僧侶という立場は親和性が高いと感じたからです。

そして現在は、葬儀やお墓といった「ライフエンディング」の領域で、ご遺族を支える活動に力を注いでいます。大切な方を亡くされた直後の忌引休暇は、深い悲しみの中にありながら、膨大な事務手続きに追われる過酷な時間でもあります。手続きに忙殺されるあまり、故人を偲ぶ大切な時間が失われてしまうのは、あまりに寂しいことだと感じています。

そこで弊社では企業に向けて「従業員が忌引休暇中に使える一括相談窓口」という福利厚生を無償で提供しております。これから働きながら親を看取る人々が増える中、従業員の生産性を落とさないようにすることは、企業にとっても社会にとっても非常に価値があると考えています。

現代は核家族化が進み、特に都心では喪主様が一人で悩みを抱え込むケースも少なくありません。私たちはそうした方々に伴走し、「何をすればよいか分からない」という不安を解消する一助となりたいと願っています。

今後はどのような仕事をしていきたいですか?

まずはこの文京区で「ライフエンディングや人生の悩みや相談を、いつでも気軽にできる場所」でありたいと思っています。

起業家として社会全体の新しい仕組み作りに取り組む一方で、僧侶としては一人ひとりの悩みや苦しみに正面から寄り添い、「あの人に相談してよかった」と思っていただけることを目指します。地域の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。


インタビュー後記

なんて親しみやすい方なのだろう。新谷さんとお話しすれば誰でも感じる印象のはずです。笑顔で出迎えてくださり、気さくにインタビューを受けていただきました。これは特別なことではなく、誰にでもこのスタイルで地域に愛される僧侶であることは間違いないです。まだまだ話し足りない!!と思っていたと思いますので、まだ続きを聞きに伺います。

お問い合わせ

Waterhuman株式会社

東京都文京区千駄木1丁目22-23-202

HP:Waterhuman Inc. | 起業家僧侶の終活スタートアップ

*ご連絡の際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。