まちの仕事人インタビュー
記憶に残る空間をつくる
株式会社 ウィズイットスタジオ 二級建築士事務所​ 代表取締役 小林亮平 (こばやしりょうへい) さん インタビュー

株式会社 ウィズイットスタジオ 二級建築士事務所を経営している小林亮平さん。神奈川県横浜市青葉区を拠点に、店舗などの商空間やオフィスを中心としたインテリアデザイン・設計を手がけている。経済学部卒業後、営業職を経てデザイン業界へ転身。看板設計の仕事からキャリアをスタートし、働きながら美術大学の通信教育課程で学びを深めた。以来30年以上にわたり空間デザインに携わり、大手設計会社での経験や海外案件、大阪万博関連プロジェクトなど幅広い実績を積み重ねてきた。長年の経験を経て、2025年に株式会社 ウィズイットスタジオを立ち上げ、「人の記憶に残る空間づくり」を大切にしながら、クライアントに寄り添ったデザインを追求している。

今の仕事を始めたきっかけを教えてください。

もともとは経済学部を卒業して、営業の仕事をしていました。ただ、社会人として働いていく中で、「自分には将来的に独立できるような仕事の方が向いているのではないか」と考えるようになったんです。小さい頃からものづくりが好きで、絵を描くことも好きでしたので、その感覚を仕事にできたらいいなと思い、インテリアデザインの道を目指しました。

最初は小さな看板屋さんに入りました。デザインの知識はまったくありませんでしたが、社長から「設計をやってみないか」と声をかけてもらったことが大きな転機でした。そこからCADやIllustrator、Photoshopなどを学び、設計の基礎を身につけていきました。

さらに働きながら美術大学の通信教育課程にも通い、デザインを体系的に学びました。振り返ると、好きだった「絵を描くこと」や「形に残るものをつくること」が、自然と今の仕事につながっていたのだと思います。

会社設立までの経緯を教えてください。

独立したいという気持ちは、実はかなり早い段階からありました。17年前からしばらくフリーランスとして活動した時期もあったのですが、その当時はまだ大型案件や海外案件の経験が少なく、自分の中でも「もっとスキルを高めたい」という思いが強かったんです。

その後は再び企業に所属しながら、さまざまな案件に携わりました。海外プロジェクトや大規模案件、大阪万博の海外パビリオン関連の仕事などにも関わらせていただき、多くの経験を積むことができました。規模の大きな案件になると、デザイン力だけでなく、多くの関係者との調整力やプロジェクト全体をまとめる力も必要になります。その経験は今の大きな財産になっています。

長年仕事を続ける中で、「自分としてやれることはかなり積み重ねられた」という感覚があり、独立するタイミングも整ってきました。そこで2025年7月に株式会社 ウィズイットスタジオを設立しました。これまでの経験を活かしながら、より自分らしい空間づくりを追求していきたいと思っています。

人の感情に残る“もう一歩先”を考えることが、空間デザインの面白さ

会社の特徴を教えてください。

私たちは単に「空間をつくる」だけではなく、その場所を訪れた方の記憶に残るような体験を生み出したいと考えています。空間づくりには、それぞれオーナー様の想いや課題がありますので、それらを丁寧に汲み取りながらデザインという手段を通じてその想いを形にしていく・課題を解決していくことを大切にしています。

デザインの仕事では、お客様との意見が異なることもあります。ただ、その時に大切なのは「最終的なゴールを共有すること」だと思っています。ゴールが同じであれば、そこへ向かう道筋はいくつもありますので、お互いに納得できる形を一緒に探していくようにしています。

また、空間づくりでは「その土地らしさ・場所性」も重視しています。新しい案件では、周辺地域の文化や人の流れ、歴史などを調べることが多いですね。そこから得られるヒントが、空間の個性や空気感につながっていくこともあります。デザインを押し付けるのではなく、場所や人に寄り添いながら最適解を見つけていくことが、私たちの特徴だと思います。

お仕事で大切にしていることを教えてください。

デザインには、数値化できる部分と、感覚的な部分の両方があると思っています。例えば飲食店の客席回転率や動線・寸法・機能性などは論理的に整理できますが、「なんとなく心地いい」「ここに居ると気分が落ち着く」といった感覚的な部分も、空間にはとても大切です。

私はまず、論理的に整理できる部分をしっかり押さえた上で、最後に感覚的な要素を加えていくことを意識しています。デザインはアートではなく、経済的価値や目的を持って成立するものですので、使いやすさや機能性を無視してはいけません。ただ、その上で人の感情に残る“もう一歩先”を考えることが、空間デザインの面白さだと思っています。

また、30年以上この仕事を続けてきた経験も大切な財産です。新しい流行をただ取り入れるのではなく、これまで積み重ねてきた経験や感覚と組み合わせながら、その空間にとって最適な答えを導き出すことを意識しています。

この仕事のどんなところが好きですか?

やはり、自分の頭の中にあったイメージが実際の空間として形になっていく瞬間ですね。最初は紙やパソコン上の2Dだったものが設計の課程で3Dとなり、施工を経て立体的な現実空間として完成していく。その過程を見るのは、何年やっていても面白いです。

完成した空間が長く残るという点も、この仕事の魅力だと思います。自分が関わった場所が実際に使われ、人が集まり、思い出が生まれていく。そこに関われることは、とてもやりがいがあります。

また、地方案件などで普段行かない土地へ行けることも、この仕事ならではの楽しみです。以前、北海道の飲食店の設計を担当したことがありました。現地へ何度も足を運ぶ中で、外国人観光客が多く集まるインバウンド独特の空気感や、自然との距離の近さを肌で感じることができました。仕事を通じて新しい文化や地域性に触れられるのも、この仕事の面白さの一つだと思っています。

今後やりたいこと等、展望を教えてください。

会社としては、まだスタートしたばかりですので、まずはしっかり経営基盤を安定させていきたいと思っています。現在は大手設計施工会社からの業務委託案件も多いのですが、今後は直接クライアント様からご相談いただける仕事をさらに増やしていきたいですね。

直接お客様と向き合うことで、その想いや理想をより深く理解しながら空間づくりができると思っています。せっかく自分で会社を立ち上げたので、自分自身の考えや価値観をもっと反映し社会貢献できる仕事を増やしていきたいという気持ちがあります。

また、将来的には同じ志を持つ仲間とも連携しながら、より幅広い案件にも挑戦していきたいです。店舗に限らず、空間に関する悩みや課題を抱えている方に対して、「まず相談してみよう」と思っていただける存在になれたら嬉しいですね。

成功哲学を教えてください。

まずは自分自身と向き合うことが大切だと思います。自分が何に夢中になれるのか、何をしている時に時間を忘れられるのか。それを振り返ることが、天職を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。

私自身も、気づけばずっとものづくりや絵を描くことが好きでした。その感覚を大事にしながら進んできた結果、今の仕事につながっています。

もちろん、好きなことだけで簡単に仕事になるわけではありません。ですが、長く続けていくためには、自分の中に「面白い」「もっとやりたい」という気持ちがあることは、とても大切だと思います。まずは自分の内側にある興味や熱中できることを見つめること。それが、人生を前向きに進める力になるのではないかと感じています。

インタビュー後記

穏やかな語り口の中に、30年以上積み重ねてきた経験と、空間づくりへの真摯な姿勢が感じられた小林さん。特に印象的だったのは、「空間をつくるだけでなく、記憶に残る体験を届けたい」という言葉でした。

論理だけでもなく、感覚だけでもない。その両方を大切にしながら、一つひとつ丁寧に空間をつくり上げていく姿勢に、長年第一線で活躍されてきた理由を感じます。また、海外案件や地方プロジェクトなど幅広い経験を経てもなお、「まだまだこれから」と語る謙虚さもとても魅力的でした。

これからウィズイットスタジオがどのような空間を生み出していくのか、とても楽しみです。人の記憶に残る場所づくりを目指す小林さんの今後のご活躍を、心より応援しております。

お問い合わせ

株式会社 ウィズイットスタジオ 二級建築士事務所

所在地:神奈川県横浜市青葉区藤が丘二丁目41番地36

TEL:045-900-6313

HP:https://www.with-it-studio.com/

*お問い合わせの際、『区民ニュース』の記事を読みました。とお伝え下さい。